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2025.04.18
CASESTUDY
枚葉、R2Rでの薄膜塗工、レオロジー、硬化時間(ゲルタイム)のSolution

半導体後工程における接着剤の重要性

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現代の製造業において、接着剤は単なる「貼り合わせ」の用途にとどまらず、半導体、光学機器、医療機器、エネルギー分野など、さまざまな分野で重要な役割を果たしています。
特に半導体分野では、微細化・高密度化が進む中で、接着剤の精密な塗布技術が求められています。
本記事では、半導体製造プロセスにおける接着剤の役割、薄膜塗工技術の重要性、そして塗工方法の最適化、塗工液物性の把握方法について詳しく解説します。

接着剤を薄膜塗工する分野とその理由

接着剤は、単に異なる材料を接合するだけでなく、強度の向上、耐久性の確保、環境耐性の向上、さらには機能性の付加といったさまざまな役割を果たします。近年では、製品の高性能化に伴い、接着剤もより薄く、均一に塗布されることが求められるようになっています。

接着剤を薄膜塗工する分野は下記のような分野があります。

 

光学機器分野

 カメラレンズ、光学フィルムなどの組み立て、張り合わせ

食品包装フィルム分野

 ラミネートフィルム、バリアフィルム、ラベルなどの接着層 

 関連記事:【ラミネート加工の種類と特徴】ドライラミネート、ノンソルラミネート、ウェットラミネートとは?

建材フィルム

 断熱フィルム、壁紙など

装飾用途

 加飾フィルム、デザインフィルムなど

医療機器分野

 ディスポーザブルデバイス、マイクロ流路デバイスなどの接合

エネルギー分野

 リチウム電池、太陽電池、燃料電池など電極および封止

 

これらの様々な場所や用途で接着剤が使用されていますが、各部品が小型化・軽量化・微細化するにつれて、接着剤にも高度な技術が求められるようになってきました。光学用途では干渉なども考慮する必要があるため、より薄く、精密な塗工技術が不可欠です。

その中でも近年、世界中で研究開発が盛んに行われている半導体製造プロセスに着目し、接着剤が使用されている箇所を見ていきたいと思います。

半導体進化の鍵を握る接着技術

AI技術の急速な進化に伴い、半導体はその中核を担う存在として、かつてないほどの注目を集めています。時価総額で世界を牽引する企業が誕生するなど、半導体産業の重要性は日々増しています。

しかし、半導体の設計・開発においては、構成材料に求められる要件が極めて高度化しています。TIMに求められる放熱性能に加え、ダイシングテープ、層間絶縁膜(ABF)、異方性導電膜(ACF)、アンダーフィル、封止材のように高機能を持ちながら接着を行うことが要求されています。

さらに、これらの材料には、薄型化、少量化、低コスト化、リサイクル性、リワーク性、そして高度な放熱性など、多岐にわたる要求が課せられています。その背景には、半導体の高密度化・高集積化に伴う技術革新があります。

 

参考記事:Thermal Interface Material(サーマルインターフェースマテリアル) | 放熱材料評価方法の課題と解決策

 

半導体の技術革新 チップレット技術

半導体の代表的な技術革新として「チップレット」が注目されています。

チップレットとは、従来、単一のチップに集積していたCPU、GPU、メモリなどの異なる機能を持つ回路を、それぞれ個別の小さな半導体チップとして製造し、それらを組み合わせることで一つの大きなシステムとして機能させる技術です。

 

メリット

・大規模な単一ダイチップを製造するよりも歩留まりが向上する。

・異なるプロセス技術のチップを組み合わせることが可能。

・特定の機能に特化したチップを最適な配置で統合し、処理速度や電力効率の向上が可能。

 

これにより、設計の柔軟性、開発コストの削減、高性能化が期待されています。

このように、チップレット技術など半導体の技術進化と共に、接着剤を含む高機能材料の重要性がますます高まっているのです。

半導体製造工程と接着剤使用場面

半導体製造工程は、大きく分けて前工程と後工程に分けられます。接着剤は主に後工程で使用され、非常に重要な役割を果たしています。

 

半導体製造 前工程

 

シリコンウエハ上にトランジスタや配線などの回路パターンを形成する工程。

半導体製造 後工程

 

前工程で作成されたウエハを個々のチップに切り分け、パッケージングする工程。

1.ダイシング工程 

ウエハ上に形成された多数のチップを、個々のチップに切り分ける工程。

ウエハマウント

薄く加工されたウエハを、ダイシングテープ(粘着フィルム)に貼り付ける。

ダイシング

高速回転するダイヤモンドブレードを使ってウエハを切断。

裏面UV照射

UV照射によってダイシングテープの粘着力が適切に制御されることで、チップをピックアップする際のストレスを軽減し、チップの破損を防ぐ。

エキスパンド

ピックアップ時に隣のチップを傷つけるリスクがあるため、チップ間の距離を広げ、取り出しやすくする。

チップ切り出し(ピッキング)

チップをダイシングテープから取り出す。

 

2.マウンティング(ボンディング)工程

マウンティング

ダイシングで切り出された個々の半導体チップを、リードフレームや基板など所定の位置に固定する

ボンディング

チップとリードフレームを接続する

 

3.モールディング工程

半導体チップを樹脂で封止し、外部環境からの保護と機械的強度を与える工程

 

半導体製造後工程での接着剤使用場面

 

半導体製造後工程では、以下のような場面で接着剤が使用されます。

工程 用途 一般的な呼び方 使用される主な接着剤
ダイシング ウエハ固定 ダイシングテープ、UVダイシングテープ UV硬化型テープ、熱剥離型テープ
チップ拡張
UV照射で粘着力を弱める
   
マウンティング、ボンディング ワイヤー固定 ワイヤー補強樹脂 エポキシ樹脂、シリコーンゲル
チップと基板の隙間を埋める チップ固定 アンダーフィル エポキシ樹脂
モールディング パッケージ封止 封止材 エポキシモールドコンパウンド(EMC)

 

関連記事:半導体封止材とは?役割や用途、品質管理について解説

 

こうした半導体のさらなる進化において、接着剤のような、一般的には高粘度液体である塗工液を、精密かつ薄く塗り生産性をあげるというのは難しい技術的課題です。この課題解決にはR2Rのプロセスを用いることが有効です。

そのためには、材料設計、塗工液の物性を把握、塗工プロセスをうまく組み合わせながら製造プロセスを最適化することが求められます。

塗工方法の選択、粘度調整、ゲルタイムの把握まで、一貫したSolutionを提案

当社は、接着剤塗工方法の選択、粘度調整、硬化時間(ゲルタイム)の把握まで、一貫したSolutionを提案いたします。

 

塗工方法選択におけるSolution

枚葉塗工における最適な塗工方法の選定

バーコーター、アプリケーター、グラビア、フレキソ(グラビアオフセット)など、  

材料の粘度や、目標とする塗膜厚に応じて最適な塗工方法を初期選定が可能です。

 

塗工方式 Wet膜厚 メリット デメリット
枚葉 R2R      
バーコーター バーコーター 1.5~500μm 再現性が高く、細かな厚み変更が容易 塗工後のレベリングを利用するため、高粘度液体ではスジが残る
バーが基材に直接接触するため、コンタミ混入や基材傷の可能性あり
アプリケーター ナイフオーバーロール
コンマコーター
ダイコート
数10μm 後計量方式で高粘度液体に適する ギャップ設定で厚み精度が決まる
基材の平坦性に影響を受けやすい
ラインスピードを上げにくい
グラビア ダイレクトグラビア
リバースグラビア
小径グラビア等
約1~20μm 薄膜、R2Rへの安定した塗工が可能 高粘度液体では凹版への抜けが起きる
フレキソ(グラビアオフセット) グラビアオフセット
差動グラビアオフセット(加温)等
約0.5~10μm 薄膜アプローチ・水性塗工液への展開可能 ゴムローラー使用による溶剤制限あり
耐久性の課題

 

K303Sマルチコーター

バーコーター/ アプリケーター/ グラビア/フレキソ/ ラミネートの印刷・塗工方式に対応

・A3 サイズまでのサンプルを手軽に作成

・UV-LED照射器が搭載可能!印刷、塗工後直ぐにUV照射ができます

・少量の材料で的確な試験が可能

・印刷、塗工スピード設定40m/min

・人的誤差を無くした再現性ある試験が可能

 

R2Rパイロットコーターで塗工条件、乾燥(硬化)条件の決定

R2Rパイロットコーターでは、枚葉式では困難な塗工条件、乾燥・硬化条件の最適化が可能です。枚葉式で得られた塗工方法や粘度のデータを基に、ライン速度、乾燥・硬化温度などを細かく調整し、量産に近い条件での検証が行えます。さらに、保護フィルム(セパレーター)との貼り合わせサンプルも作成できます。

 

ラボ/パイロットコーター VCML

12種類以上の印刷、塗工が選択可能 オプションでUV(ランプ、LED)が可能

生産機との相関が取れる試験ができ、材料開発/ サンプル作製/ 量産前試験/ 生産現場で発生した不具合の検証などのスピードアップ、コストダウンを実現します。

・印刷、塗工

 フレキソ印刷 /グラビア印刷 / ロータリースクリーン印刷 / ダイレクトグラビア /

  リバースグラビア /  小径グラビア/ オフセットグラビア / メーターバー / ナイフオーバーロール /

 コンマ・バー / 差動オフセットグラビア/ エアナイフ / スロット・ダイ 他

・オプション

 UV(ランプ、LED)※窒素パージ選択可、コロナ処理、熱風乾燥、IR乾燥、加熱ラミネーター、電気テンション制御、エッジガイドetc

 

塗工液の材料設計、物性の把握におけるSolution

 

粘度、レオロジー、硬化温度、硬化時間(ゲルタイム)、ポットライフの測定 

乾燥条件、硬化条件を検討するためには正確な硬化時間(ゲルタイム)の把握が不可欠です。

またポットライフの把握は生産性、品質管理において重要です。ゲルタイムを自動測定装置は、樹脂の硬化挙動をグラフで可視化します。

ゲルタイム測定装置 まどか

・様々な樹脂のゲルタイムが測定可能

 熱硬化性樹脂、2液硬化型樹脂、湿気硬化型樹脂、常温硬化型樹脂など

 エポキシ、シリコーン、ウレタン、フェノール、不飽和ポリエステル、PVC、フラン樹脂、アクリル樹脂

・ユーザー例

 プリプレグ、半導体封止材、接着剤、粘着剤、摩擦材、シーリング材、塗料他

・統計データから管理図、ヒストグラム図、パレート図を簡単に作成できます

 

新型ゲルタイム測定装置しずか

・カーボンプリプレグなどシート状のままゲルタイムを測定。様々な樹脂の測定が可能

 クロス(織物プリプレグ)、UD(一方向タイプ)、トウプリプレグ

 ガラス繊維プリプレグ、RCC(樹脂付銅箔)、SMC(Sheet Molding Compound)、

 エポキシ、フェノール、不飽和ポリエステル、ウレタンなど

・10μmの 極薄プリプレグから厚みのある材料まで測定が可能

・温度条件として、一定温度、昇温での測定が可能

 熱板温度を一定にした状態で試料を投入し測定することも、昇温させながら測定することも可能

・液体& 粉体サンプルの測定

 高充填フィラー入りサンプル、嫌気性サンプル、ゼリー状サンプルなど幅広く対応

・硬化挙動をグラフで可視化

 判定値(閾値)を設定し、ゲルタイムを自動計算します。

 また、測定したせん断応力から、粘度、位相、せん断弾性率などを計算しグラフ化します。

 

松尾産業では、接着剤の塗工方法選択から粘度・レオロジーの調整、硬化時間(ゲルタイム)の測定まで、一貫したプロセスで最適なソリューションをご提案いたします。

 

新横浜駅から徒歩5分のデモルームにてテスト受付中!

新横浜駅から徒歩5分のデモルームにて、各種試験や最適条件の検証が可能です!サンプルをお持ちいただければ、実機での塗工・硬化テストを通じて、量産に向けた最適なプロセスをその場で確認できます。

松尾産業の〝ウェットコーティングSolution”〝熱Solution”デモルームに是非お越しください。

 

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