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2024.12.18
CASESTUDY
~プロセス決定におけるテストコーターの重要性~

ウェットコーティングの種類

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近年、ものづくり、製造プロセスは、製品の機能はもちろん生産効率、コストを考えるだけでなく、環境負荷低減やサーキュラーエコノミーも考慮したものづくり、開発が重視されるようになってきています。エネルギー削減、CO2排出量の低減、有機溶剤排出低減からの水性化、フィルムから紙化、リデュース、リユース、リサイクル、コンポストなど、多岐にわたる課題を考慮した上で、製品開発、製造プロセスを構築することが求められています。その中で、コーティングプロセスを決定する場合においても、機能性、環境への負荷、コスト、生産性など様々な制約条件を考慮し、材料研究開発から生産まで一連のプロセスを一貫して進めていく必要があります。
本記事では、様々な製造・加工プロセスの中からウェットコーティングに焦点を当て、その種類について解説します。テストコーターの選定の一助となれば幸いです。

ドライコーティングとウェットコーティング

ウェットコーティングの種類

ウェットコーティングの種類

コーティングは基材などに機能付与するための大きな要素であり、その手法は大きく分けてドライコーティングとウェットコーティングに大別されます。

 

ドライコーティング(乾式法)

機能付与するための材料を固体のまま支持体(基材)にコーティングする技術を指します。

真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVDなどがあげられ、主にアルミ、ITOなど金属材料などのコーティングに用いられます。

乾燥工程がなく高品質な成膜が可能ですが、基本的にコーティングは真空中で行われるため、装置の大型化、連続生産が困難であるため生産性を上げにくい、製造設備のイニシャルコストが大きくなるなどの課題もあります。

一般的には半導体、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイなどの生産に多く使用されています。

 

ウェットコーティング(湿式法)

いわゆる塗布、塗工と呼ばれる、支持体(基材)に機能付与するための製造方法です。幅広い工業分野において一般的です。

材料を溶媒(水、有機溶剤)に溶解または分散といった処理で液体化、スラリー化し、基材に対して均一に塗布、塗工し、乾燥や硬化させることにより、薄膜化させる技術を指します。

ドライコーティングとは異なり真空環境ではなく大気圧環境下で塗工が可能で、装置の自由度があり、基材、塗工液の供給を連続することが出来るため、量産化、コスト低減が可能になります。

その為、身の回りの食品パッケージフィルム、紙、ディスプレイ関連光学フィルム、リチウム電池、住宅関連資材など様々な製品で利用されています。

 

ロールtoロールコーターのコーティング方式と分類

今回は、これらのウェットコーティング塗工の中でも、基材をロール状で連続的に生産可能なロールtoロールのコーティング方式について取り上げます。

 

コーティングには以下の3つの組み合わせがあります。

①支持体(基材)へ塗工液を転移させる

②塗工重量、あるいは塗工厚さを決定する

③塗膜表面を平滑にする

 

多様なコーティング方式はこれらの要素の組み合わせによって開発、利用されています。新たな研究、開発、製造プロセス開発においては、この3つの要素を深く分析することが重要です。

 

前計量系と後計量系

ロールtoロールのコーティング方式で、支持体(基材)へ塗工液を転移させる方法は、大きく分けて、前計量系(規定アプリケーション系)、後計量系(過剰アプリケーション系)があります。

・前計量系

支持体(基材)に塗工液を転移させる前に、あらかじめ所望の塗工重量または塗工厚さになるように計量しておいた塗工液を支持体に転移させること

・後計量系

支持体(基材)に所望の塗工重量、塗工厚さよりも余計に塗工液を転移させておいて、その後、既定の塗工重量、塗工厚みに減少させること

 

平坦化コーターと輪郭コーター

平坦化コーターと輪郭コーター

塗膜の表面形態による分類では、平坦化コーターと輪郭コーターがあります。

 

平坦化コーター(leveling coater)

支持体表面の輪郭に無関係に平滑な塗膜表面が形成する傾向にあるコーターを平坦化コーター(leveling coater)と言います。ミクロ的に見て塗膜厚みが不均一になる傾向にあります。一般的に後計量系は平坦化コーターになります。

 

輪郭コーター(contour coater)

支持体表面の輪郭がそのまま塗膜表面に反映されるコーターを輪郭コーター(contour coater)といいます。ただしコーターヘッド通過後、塗工液が表面張力によりレベリングしないことを前提しています。一般的に前計量系は輪郭コーターになります。

 

※その他、塗工液の供給方法によっても分類することができますが、塗工液の液性(粘度、粘性力、ニュートン流体、非ニュートン流体、表面張力、慣性力、重力、毛管数、レイノズル数、空気同伴など)や、支持体(基材)の表面状態(形状、粗さ、浸透、接触角)など、様々な要因を考慮する必要があるためここでの紹介は省略します。

コーティング方式一覧

コーティング方式 成膜形態 最高速度 m/min 粘度 ※一般的な
乾燥重量 g/㎡
代表的なアプリケーション 特徴

メーターバー

(バーコーター)

中間 400 10-2,000 3-25 紙コーティング、ワックス、LIB用セパレーター保護膜、光学フィルム、接着剤塗工 膜厚設定が安価かつ容易、低粘度域がメインで精密塗工向き 
基材に傷が入る可能性あり
ダイレクトグラビア 前計量 300 10-10,000 1-40 フィルム塗工、紙塗工、接着剤塗工 凹版(アニロックス)、広幅でも塗工厚さが均一
版目が残る可能性あり
リバースグラビア 前計量 1000 10-20,000 5-50 紙やフィルムへの高品質コーティング
ピンホールが無く光学的にも良い
液晶パネル、光学フィルム、太陽光パネル、反射防止フィルム、有機EL
低粘度から高粘度まで対応可能
版目を潰すことが可能になる
小径グラビア 前計量 1000 10-20,000 1-80 紙やフィルムへの高品質コーティング
ピンホールが無く光学的にも良い
液晶パネル、光学フィルム、太陽光パネル、反射防止フィルム、有機EL
低粘度から高粘度まで対応可能、薄膜精密塗工向き
版目を潰すことが可能になる
オフセットグラビア 前計量 300 10-10,000 1-20 無溶剤シリコン、ラッカーコーティング 凹版(アニロックス)からゴムロールへ転写
表面の粗い基材にも塗工液の転移が良い 溶剤が限定される

差動オフセットグラビア

(温水加熱)

前計量 300 10-10,000 0.5-15 シリコン紙(ラベル台紙) 凹版(アニロックス)からゴムロールへ転写
表面の粗い基材にも塗工液の転移が良い 溶剤が限定される
ロールに速度比を持たせることで薄膜が狙える

ナイフオーバーロール

(ナイフコーター)

後計量 60 2,000-10,000 20-200 粘着剤、ラミネート、燃料電池、LIB電極 高粘度、厚膜向き、塗工精度は低くなりやすい

コンマバー

(コンマヘッドコーター)

後計量 60 2,000-10,000 20-200 粘着剤、ラミネート、燃料電池、LIB電極 高粘度、厚膜向き、塗工精度は低くなりやすい
エアナイフ 前計量 400 10-1,000 6-30 アート紙、壁紙、ラベル用紙、ノーカーボン紙 多くは紙への塗工に用いられ、水系塗工液がメイン
スロットダイ 前計量 500 1-400,000 2-1000 多目的プロセスや感光性コーティング(写真フィルム)、LIB電極 粘度、厚み範囲の適応エリアが広い。しかしながらノウハウがかなり必要。
ダイ設計、シム、リップ、ポンプ選定、ライン速度など様々なパラメーターに工夫、経験が必要
スロットダイ 加熱 前計量 400 10,000-400,000 10-200 ホットメルト接着剤 ウェットコーティングというより成形寄り

 

 

※参考文献 加工技術研究会発刊 コンバーティングのすべて 第1章コーティング 「実践的コーティング方式の選択技術」P29~71 原崎総合コンサルタント 原崎勇次著

 

※一般的な乾燥重量 Wet膜厚とDry膜厚について

一般的な塗工液は材料を溶剤(水もしくは有機溶剤)に溶解、分散したものです。溶剤(分散媒)は乾燥により揮発します。乾燥前(塗工直後)の膜厚をWet膜厚、乾燥後の膜厚をDry膜厚と呼びます。

固形分濃度によりDry膜厚は変化します。例えば固形分濃度が50%vol.の場合、Wet膜厚が10μmであれば、Dry膜厚は5μmになります。

 

固形分濃度は粘度、乾燥温度、乾燥時間(乾燥炉の炉長)、ラインスピードに影響を与えます。また、高粘度塗工液は流動性が低いため、薄膜化が困難であり、低粘度塗工液は流動性が高いため、厚膜化が難しいという特性があります。

したがって、機能を損なわない範囲で可能な限り薄く塗工することで、材料の使用量を抑えることができます。

そのため、塗工液の調整とコーティング方式の選択は極めて重要な要素となります。

テストコーターの重要性、役割は大きい!!

Roll to Rollコーティングを利用したアプリケーション例

電子材料 光学フィルム AR
AG
偏光
TAC
ハードコート
位相差フィルム
電子部品 剥離フィルム
フィルムコンデンサ
磁気テープ
導電性フィルム
保護テープ、フィルム
静電除去フィルム
層間絶縁フィルム
フィルムデバイス
フレキシブルデバイス
キャリアテープ
粘着テープ
半導体 ダイシングテープ
層間絶縁フィルム
モールド用離型フィルム
ダイボンドフィルム
封止用フィルム
粘着テープ
異方性導電フィルム
電池、発電 LIB正極
LIB負極
アルミラミネートフィルム
セパレーター
バックシート
導電性フィルム
軟包装 OPP二軸延伸ポリプロピレン
CPP無延伸ポリプロピレン
PETポリエステル
Onyナイロン
LLDPE直鎖低密度ポリエチレン
VMCP/VMPETアルミ蒸着
ラベル 紙台紙
フィルム台紙
離型フィルム

 

塗工方法の選択は、機能性だけでなく、塗工液の自由度(粘度調整、固形分濃度、分散媒、分散粒子、顔料、添加剤など)も制限を受けます。また、設備投資などのイニシャルコスト、生産性を考慮して最適な製造プロセス、コーティング方法を選択し、製品を早期に上市することが重要です。

例えば化学メーカーで新規材料を開発している場合は、開発した材料が顧客によってどのように活用されるか、その後のプロセスまで視野に入れる必要があります。

一方、コンバーター、加工メーカーは、ノウハウを最大限に活かした効率的な塗工技術の確立が重要な課題です。既存設備との整合性や、新たな生産手段への対応も考慮する必要があります。

しかしながら、既存の生産設備を用いてのプロセス条件検討、テストピース作成を行うには以下の大きな課題があります。

 

1.膨大な材料コスト

2.生産をストップすることによる機会損失、既存製品の生産量低減

3.気軽に試す時間、日程を作れない

4.生産再開時へのコンタミ、生産機トラブルへの懸念

 

当社のテストコーターは、上記の課題を解決し、新たな製品開発、プロセス開発、新規生産設備検討などをスピーディーにおこなうための大きな役割を果たします。

卓上テストコーターは、数ccの材料でA3まで基材でのテストピース作成が可能です。R2Rパイロットコーターは、数百ccの塗工液で、300mm幅の基材に塗工できるため、開発者自身が気軽にテストできます。

当社デモルームでは卓上テストコーター、R2Rパイロットコーターをお試し頂ける環境が整っており、塗工液と塗工方法の組み合わせを探る、最適な製造プロセス条件、簡易的なサンプル試作をサポートいたします。

 

●ラボ/パイロットコーター VCML

12種類以上の印刷、塗工が選択可能 オプションでUV(ランプ、LED)が可能

生産機との相関が取れる試験ができ、材料開発/ サンプル作製/ 量産前試験/ 生産現場で発生した不具合の検証などのスピードアップ、コストダウンを実現します。

 

ラボ/パイロットコーター VCML 塗工、印刷方式一覧 

塗工_印刷方式一覧 

フレキソ印刷 /グラビア印刷 / ロータリースクリーン印刷 / ダイレクトグラビア /リバースグラビア / オフセットグラビア / メーターバー / ナイフオーバーロール /コンマ・バー / 差動オフセットグラビア/ エアナイフ / スロット・ダイ 他

 

・オプション

UV(ランプ、LED)※窒素パージ選択可、コロナ処理、熱風乾燥、IR乾燥、加熱ラミネーター、電気テンション制御、エッジガイドetc

 

●K303Sマルチコーター

バーコーター/ アプリケーター/ グラビア/フレキソ/ ラミネートの印刷・塗工方式に対応

・A3 サイズまでのサンプルを手軽に作成

・UV-LED照射器が搭載可能!印刷、塗工後直ぐにUV照射ができます

・少量の材料で的確な試験が可能

・印刷、塗工スピード設定40m/min

・人的誤差を無くした再現性ある試験が可能

 

新横浜デモルームにてテスト受付中!

デモルームにて、ラボ/パイロットコーターVCMLのテストが可能です。

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