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2025.03.19
CASESTUDY
ロールtoロール グラビアコーティングの種類

グラビアコーティングの選択 | ダイレクトグラビア、リバースグラビア(ニップ、キス、小径) の特徴、用途を解説

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ウェットコーティングはいわゆる塗布、塗工と呼ばれる、支持体(基材)に機能付与するための製造方法であり、身の回りの食品パッケージフィルム、紙、ディスプレイ関連光学フィルム、リチウム電池、住宅関連資材など様々な製品で利用されています。
そのウェットコーティングの方式の中でも生産性の高いロールtoロール、その中でもグラビアコーティングに焦点を当て、各方式の特徴、用途、メリット・デメリットを詳しく解説します。

グラビアコーティング

一般的にグラビアと言うとグラビア印刷で、印刷物(カタログ、食品包装など様々)に幅広く利用されており、版にパターンを印刷する技術です。

そのグラビアを利用してコーティングを行うものがグラビアコーティングになります。

グラビアコーティング

グラビアコーティングとは、グラビアロール(アニロックスロール、彫刻ロール)の凹部の版に塗工液を充填し、凹部に充填された塗工液を直接基材に転写する方式です。

グラビアコーティングにはダイレクトグラビア、リバースグラビア(ニップ、キス、小径)などの種類があります。

以下ではそれぞれの特長、用途例などを解説します。

ダイレクトグラビア

ダイレクトグラビアはグラビアロールが基材と同じ方向に回転するものを指します。

ダイレクトグラビア

グラビア印刷の場合、写真下の様にアニロックスロールのドットがそのまま再現性良く転写され、ドットの大小や濃淡によって豊かな色彩表現が可能です。

グラビア印刷ドット拡大

一方、グラビアコーティングの場合は、基材に転写された隣り合うドット同士がレベリングにより繋がることでコーティング膜を作成します。グラビア印刷の生産現場などでは数百m/minで行われており、ダイレクトグラビア、グラビア印刷はその高い生産性から大量生産に適しています。

 

ダイレクトグラビアの特長、メリット

 

・高速塗工が可能(最大約300 m/min)

・膜厚の均一性が高い

・構造がシンプルで制御が容易

 

ダイレクトグラビアのデメリット

 

・厚膜塗工には不向き(一般的に5~10μm以下)

・低粘度液に適しており、高粘度液には向かない

 

ダイレクトグラビアの用途例

 

・機能性フィルム(PET, TAC, PI)

・撥水、撥油コーティング

・食品、医薬品パッケージのバリアコート

リバースグラビア

リバースグラビアには、ニップ、キス、小径グラビアがあり、グラビアロールは基材と逆方向に回転します。

リバースグラビアは、ダイレクトグラビアでおこるドット、レベリング不良の発生を基材とグラビアロールの回転を逆にして解消することが狙いです。

 

リバースグラビアの特長、メリット

 

・厚膜塗工が可能(約10~50μm)

・高粘度液の塗工に適している

・塗布液の保持力が高く、しっかりと塗布できる

 

リバースグラビアのデメリット

 

・塗工速度は低め(最大で約150 m/min)

・塗工液のロスがやや大きい

 

リバースグラビアの用途例

 

・接着剤、バインダーコート

・導電性インクの厚膜塗布

・食品包装向けバリアコーティング

リバースグラビア(ニップ)

リバースグラビアニップ

グラビアロールとバックアップロールの間に基材をしっかりと挟み込む(ニップ)ことで、安定した塗布が可能です。

 

リバースグラビア(ニップ)の特長、メリット

 

・厚膜塗工に適する(約10~50μm)

・高粘度液(約100~1000 mPa·s)にも対応可能

・ニップ圧を調整することで膜厚をコントロールできる

 

リバースグラビア(ニップ)のデメリット

 

・基材の圧縮による変形やしわが発生しやすい

・膜厚の均一性がやや低い(バックアップロールの影響を受ける)

 

リバースグラビア(ニップ)の用途例

 

・接着剤(粘着剤・バインダー)

・リチウムイオン電池の電極塗布(厚膜)

・バリアコーティング(厚膜ガスバリア)

・金属箔やフィルムの厚膜塗布

キスリバースグラビア

キスリバースグラビア

基材とグラビアロールは軽く接触する(キス)だけで塗布を行い、バックアップロールを使用しません。

 

キスリバースグラビアの特長、メリット

 

・薄膜塗工に適する(約1~10μm)

・低粘度液(約10~300 mPa·s)が塗布可能

・基材に対するダメージが少なく、柔軟なフィルムにも適用可能

 

キスリバースグラビアのデメリット

 

・膜厚制御がやや難しく、塗工液の粘度や表面張力に依存

・厚膜塗布には不向き(液体保持力が弱いため)

 

キスリバースグラビアの主な用途

 

・光学フィルムのコーティング(ARコート、撥水・撥油コート)

・機能性コーティング(アンチグレア、導電膜)

・パッケージフィルムのバリアコーティング

・薄膜接着剤(ホットメルト、UV硬化型接着剤)

リバース小径グラビア

小径グラビア_リバース

小径グラビアは、通常のグラビアコーティングで使用されるグラビアロールよりも、直径の小さい(φ30~50㎜程度)のグラビアロールを用います。

基材とグラビアロールは軽く接触するだけで塗布を行い、バックアップロールを使用しません。

 

リバース小径グラビアの特長、メリット

 

・超薄膜塗工が可能(約0.1~5μm)

・微細パターン形成が可能(導電性回路、ナノコーティング)

・均一な薄膜を作るのに最適(光学用途向け)

 

リバース小径グラビアのデメリット

 

・厚膜塗布には向かない

・塗布液の粘度管理が非常に重要(適正範囲:5~200 mPa·s)

 

リバース小径グラビアの用途例

 

・OLED、TFT向けの機能性コーティング

・導電性インク(ITO、銀ペースト)の微細パターン塗布

・超薄膜バリアコート(ガスバリア、ナノコーティング)

・医療、バイオデバイスの精密塗工(センサーフィルム)

 

グラビアコーティング方式まとめ

項目 ダイレクトグラビア リバースグラビア ニップ リバースグラビア キス リバースグラビア 小径
塗布方式 グラビアロールで直接基材に塗布 グラビアロールとバックアップロールで基材を圧接 グラビアロールと基材が軽く接触(非圧接) 小径グラビアロールを用いた超薄膜塗工
適用膜厚

約1~20μm

(中厚膜向け)

約10~50μm

(厚膜向け)

約1~10μm

(薄膜向け)

約0.1~5μm

(超薄膜向け)

適用粘度

約10~300 mPa·s

(低~中粘度向け)

約50~1000 mPa·s

(高粘度対応)

約10~300 mPa·s

(中粘度対応)

約5~200 mPa·s

(低粘度対応)

塗工精度

★★★☆☆

(比較的均一)

★★☆☆☆

(膜厚ばらつきあり)

★★★★☆

(比較的均一)

★★★★★

(超高精度)

塗布安定性

★★★☆☆

(安定性は中程度)

★★★☆☆

(圧接による基材の変形リスクあり)

★★★★☆

(圧力が低いため安定しやすい)

★★★★★

(安定した極薄膜塗工)

液体特性 低~中粘度の一般塗工向け

高粘度・高固形分の材料向け

(粘着剤、電極材料)

中粘度の機能性材料向け

(バリア膜、光学膜)

低粘度液に最適

(ナノコーティング、光学コート)

生産速度

約50~300 m/min

(高速)

約10~150 m/min

(比較的低速)

約50~200 m/min

(中速)

約100~300 m/min

(高速)

主な用途 機能性フィルム(PET, TAC, PI)
食品・医薬品パッケージのバリアコート
一般的な薄膜コーティング
厚膜バリアコーティング
接着剤・粘着剤塗布
リチウムイオン電池電極塗布
光学コーティング(ARコート、撥水・撥油)
パッケージフィルムのバリアコーティング
MLCC電極・誘電体塗布
OLED/TFT機能性コート
ナノバリアコーティング

 

ウェットコーティングの種類 コーティング方式一覧はこちら

 

ウェットコーティングの中でも、特に精密塗布を可能にするグラビアコーティング。その基本原理から多彩な応用例までを紐解き、その可能性を解説しました。

グラビアコーティングは、多様なニーズに応える柔軟性と卓越した性能を兼ね備え、今後の産業界での活躍が期待される技術です。

しかし、理想的なコーティング条件を追求する上で、避けて通れないのがプロセス条件の検討と試作です。既存の生産設備を流用する場合、プロセスに膨大なコストがかかる、生産をストップすることによる機会損失など、大きな課題が存在します。

当社のテストコーターは、上記の課題を解決し、新たな製品開発、プロセス開発、新規生産設備検討などをスピーディーにおこなうための役割を果たします。

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