再生可能エネルギー拡大を支えるため、系統用蓄電池が不可欠なインフラになる
――はじめに、系統用蓄電池ビジネスが注目される背景について教えてください。
阿部:日本政府は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すことを宣言しました。目標達成に向けてさまざまな取り組みが進められています。
日本のCO2排出量の内訳はエネルギー・産業・運送で全体の8割以上とその多くが産業利用によるものです。なかでも最大の割合を占めるのがエネルギー分野です。現状は日本の電源の内訳としてCo2を排出する火力が過半数を占めている状況です。経済産業省はカーボンニュートラル達成に向けて2030年には火力発電を縮小し、その分再生可能エネルギーを広く普及させることを目標に掲げています。
引用:国立環境研究所「温室効果ガスインベントリオフィス」より
引用:経済産業省 資源エネルギー省 2020—日本が抱えているエネルギー問題(後編)より
しかし太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーは、気候や時間帯による発電の変動要素が大きく、電力系統への負担が大きいという課題があります。
具体的にお伝えすると、太陽光発電は太陽が当たる昼間は発電量が多く夜間は発電致しません。しかし、電力の多くが使用されるのは夕方から夜にかけてとなります。電力は、需要と供給の一致が不可欠である“同時同量”の原則があります。電力系統では需要と供給のバランスが崩れると、電気の品質(周波数)が乱れ、大規模停電が発生するリスクを秘めています。そのため、従来は再生可能エネルギーの調整力として火力発電が活用されてきました。
将来的な火力発電の縮小により、今後の電力の安定化には、供給量≧需要量の時に充電して、需要量≧供給量の時に放電する系統用蓄電池が欠かせない社会インフラになることが期待されます。電力系統の“同時同量”の運用を担う調整力として、系統用蓄電池に注目が集まりつつあります。
――系統用蓄電池はどのようなビジネスモデルなのでしょうか?
阿部:系統用蓄電池ビジネスのポイントとして、電力市場での電気料金の単価の変動があります。電力市場の単価は、時間帯によって大きく変動しています。
簡単に言いますと需要の少ない時間帯は単価が低く、夕方・夜間や朝など需要の多い時間帯は単価が高くなります。系統用蓄電池を活用することで、需要の少ない時間帯に充電し、需要の多い時間帯に充電した電気を販売し、その差額分を収益とすることが可能です。
上述したように太陽光発電は昼間を中心に発電量が多くなるため、発電した再エネに需要が追い付かず太陽光発電を止める出力制御が発令されるなど、再生可能エネルギーが供給過多となっています。そのため、昼間は市場価格が非常に低くなる傾向があります。安い価格で電気を仕入れ、ピーク時に売ることにより多くの収益を得ることができるわけです。
系統用蓄電池ビジネスでは系統用蓄電池を導入し、電力市場を活用して利益を得ます。複数の取引市場に参加することが認められており、容量市場(kW価値)、需給調整市場(ΔkW価値)、卸市場 (kWh価値)等での収入を組み合わせて投資回収していくビジネスモデルが主に想定されています。
引用:資源エネルギー庁「系統用蓄電池の接続・利用のあり方について」