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2024.06.12
CASESTUDY

カーボンプリプレグ(炭素繊維プリプレグ)のゲルタイム測定

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カーボンプリプレグは炭素繊維シートなどに樹脂を予め含浸させており、その樹脂を加熱、成形させるなどの工程を経て硬化させCFRPとして航空機、自動車、スポーツ用品向けなどの様々な用途に使用されています。その優れた特性により年々需要が増加しています。
CFRP製品を開発、使用する上でカーボンプリプレグの品質管理は非常に重要です。新型ゲルタイム測定装置「しずか」は、炭素繊維プリプレグなどシート状のままゲルタイム測定ができ、製造工程の品質管理、製品性能の向上、コスト削減などに貢献します。

カーボンプリプレグ(炭素繊維プリプレグ)とは?

カーボンプリプレグの工程

カーボンプリプレグ(Carbon Pre-Impregnated)とは、炭素繊維(シートなど)に樹脂を予め含浸させた中間材料です。Bステージと呼ばれ、樹脂が半渇きの粘着性を保った状態です。

カーボンプリプレグに含浸させる樹脂には、加熱すると硬化する熱硬化性樹脂と、加熱すると融解する熱可塑性樹脂があります。用途や目的に応じて様々ですが、高い強度と剛性、耐熱性に優れることから熱硬化性樹脂ではエポキシ樹脂や不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂が多く使用されています。

熱可塑性樹脂では、ポリカーボネイト(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエーテルエーテルイミド(PEEK)ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアミド(PA)などが使われます。

カーボンプリプレグの特徴

カーボンプリプレグはそのままの状態で使用されることはなく、加熱、成形などの工程を経てCFRPとして使用されます。加熱、成形などの工程を経ることで強度と耐久性が高くなります。さらに従来の金属材料と比較して軽量なため、高強度な部材を軽量化できます。また、腐食しないことも特長です。

・異方性材料である

カーボンプリプレグは繊維と樹脂という性質の異なる材料を組み合わせでできています。そのため繊維の方向や材料を変えることで、金属では難しかった形状や強度の部品を製造することができ、さらには金属部品と統合したこれまでにない形状を実現できます。

・軽量

CFRPに使用される炭素繊維は非常に軽量です。そのため、カーボン(炭素繊維)プリプレグを硬化させたCFRPは鉄鋼材料やアルミニウム合金などと比べても軽量です。

・強度が高い、高い剛性を持つ

CFRPを構成する炭素繊維の方向性によって、強度特性が大きく変化します。鉄の約10倍の強度のものもあります。強度が高く軽量であるため、飛行機など様々な工業製品に使用されています。

・耐腐食性に優れている

CFRPは炭素繊維とプラスチックの複合材料であるため、錆びの発生がなく、耐腐食性に優れています。

カーボンプリプレグの用途

カーボンプリプレグは熱と圧力を加えて硬化させることで、CFRPとして軽量で強度に優れた特性を活かしさまざまな分野で使用されています。
1970年代からゴルフクラブのシャフト、テニスラケット、釣竿などのスポーツ用品に使用されてきました。1990年代から航空機、自動車などの輸送機用途に拡大し、更に最近ではエネルギーやインフラ用途でも活用されており、CFRPの需要は高まり続けています。
今後は風力発電ブレード、水素タンク、圧力容器(CNG)、自動車、航空機、、スポーツ・レジャー用品などで市場の拡大が予想されます。

・航空:構造部材、主翼、胴体フレームなど

航空機の軽量化、強度向上、剛性向上に貢献します。

・自動車:ボンネット、ルーフ、トランク、 ホイール、プロペラシャフトなど

軽量化による燃費向上や自動車の剛性を高めることに貢献します。

・スポーツ用品:ゴルフのシャフトやテニスラケットのフレーム、釣り竿、自転車など

・医療機器:人工関節や人工骨、X線グリッドなど

・土木建築:橋梁や建築物のコンクリート補強材など

カーボンプリプレグの種類

トウプリプレグとカーボンプリプレグシート

カーボンプリプレグは繊維の方向によって種類があります。繊維が一方向に並んだUD材、縦と横方向に織ったクロス材があります。また、トウプリプレグのような繊維束などもあります。

 

・クロス材(織物プリプレグ)

繊維を縦横に交差して織られたもので、繊維の方向性を制御できるため高い強度と剛性を持ち、バランスが良いのが特徴です。

・UD材(一方向プリプレグ)

UDとは、Uni Directionalの略で、単一方向を意味します。5~10μm程度のものなど、非常に細いカーボン繊維が一方向に並んでいる特性を表します。繊維方向に沿った強度と剛性が非常に高いのが特徴です。ただし、繊維方向でない場合は強度と剛性が低くなります。

・トウプリプレグ(束)

カーボン繊維やガラス繊維1本に樹脂を含浸させて束にしたもので、数百から数万本の繊維を束ねて作られます。トウは英語の「tow」が語源で、繊維束という意味です。

 

カーボンプリプレグとCFRPとの違い

CFRPはCarbon Fiber Reinforced Plasticsの略で、炭素繊維強化プラスチックを意味します。

カーボンプリプレグが炭素繊維シートなどに樹脂を予め含浸させた中間材料であるのに対し、カーボンプリプレグをプレスと熱で硬化させたものがCFRPです。CFRPは軽量で耐熱性があり、強度に優れているという特徴があります。

 

 CFRPの成形方法

CFRPの成形方法には、オートクレーブ成形、RTM(樹脂注入)成形、BMCプレス成型、ハンドレイアップ成形、フィラメントワインディング成形、シートワインディング成形、といった様々な成形方法があります。樹脂の種類や形状、品質、コストなど、用途によって最適な成形方法を選定する必要があります。

特に、形状や材料などの設計自由度が高く、CFRPの特徴を引き出しやすい製法であるオートクレーブでのCFRPの成型についてご紹介します。

 

オートクレーブ成形

1.カーボンプリプレグを所定の形状にカットし、型にカットしたカーボンプリプレグを貼り付け必要枚数積層する。

2.型内に残っている空気を除去し、積層したプリプレグの型への密着性を高める。

3.オートクレーブに型を入れ、熱や圧力を加え硬化させる。

4.硬化後、カーボンプリプレグが硬化してできたCFRPを型から取り出す。

 

CFRPのデメリット

CFRPのデメリットは分解が難しいことです。製品寿命を終えたCFRPの多くが廃材として埋め立て処分されている状況が課題となっています。

参考:CFRPリサイクルは難しい?CFRPリサイクルの現状と課題、電解硫酸法についてもわかりやすく解説!

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カーボンプリプレグの課題

カーボンプリプレグは、高強度、軽量、耐熱性、耐腐食性など多くのメリットがある一方、以下のような課題もあります。

・樹脂の品質管理が重要

カーボンプリプレグは、樹脂が予め含浸されています。カーボンプリプレグに含まれる樹脂は熱により硬化し、カーボンファイバーを固着させる役割を果たします。しかし、樹脂の硬化に必要な熱の温度や時間はそれぞれ異なるため、適切な温度の設定や管理が求められます。

・積層構造が特性に影響する

カーボンプリプレグは、複数の層を重ねて成形されます。積層する層の数や繊維の方向の違いにより製品の特性が大きく変化するため、使用条件に合わせた積層設計が重要になります。

カーボンプリプレグに重要な品質管理

カーボンプリプレグの取り扱いには適切な品質管理を行うことが重要です。品質管理が不十分ですと、材料が劣化し製品の強度や性能を低下させる恐れがあります。

そのためには保管温度と期間の管理、ポットライフ(可使時間)の把握が重要です。

また、実際に使用する前にプリプレグの状態を確認することが必要です。

 

カーボンプリプレグのゲルタイム(硬化時間)測定

炭素繊維プリプレグの測定

カーボンプリプレグ(炭素繊維プリプレグ)のゲルタイム測定は、樹脂の硬化時間を客観的に評価する指標となります。プリプレグを使用する前にゲルタイム測定を行うことで、製品の品質管理に貢献できます。

そこで、カーボンプリプレグシートのゲルタイムを簡単に測定できる装置が求められていました。

 

カーボンプリプレグなどシートのままで測定可能な新型ゲルタイム測定装置

新型ゲルタイム測定装置しずかは、炭素繊維プリプレグなど、これまで難しいとされてきたシート状でのゲルタイム測定を実現しました。さらに一定温度、昇温での測定が可能です。

 

カーボンプリプレグの測定事例

 

クロス材の測定

 

UD材(一方向)の測定

 

新型ゲルタイム測定装置 しずかでできること

・カーボンプリプレグなどシート状のままゲルタイムを測定。

従来のガラス繊維プリプレグのゲルタイム測定は「粉だし」と言って、Bステージ状態のプリプレグシートから樹脂の粉を取り出して測定していました。しかし、粉出しには時間と手間がかかるのと、近年の技術の進化により年々プリプレグシートが薄くなり、粉だしが困難になっていました。しずかは、シート状のままゲルタイム測定ができるため、従来の課題を解決します。

・様々な樹脂の測定が可能

クロス材(織物プリプレグ)、UD材(一方向タイプ)、トウプリプレグ

ガラス繊維プリプレグ、RCC(樹脂付銅箔)、SMC(Sheet Molding Compound)など

エポキシ、フェノール、不飽和ポリエステル、ウレタンなど

・温度条件として、一定温度、昇温での測定が可能

熱板温度を一定にした状態で試料を投入し測定することも、昇温させながら測定することも可能

・粉体& 液体サンプルの測定

高充填フィラー入りサンプル、嫌気性サンプル、ゼリー状サンプルなど幅広く対応

・硬化挙動をグラフで可視化

判定値(閾値)を設定し、ゲルタイムを自動計算します。

また、測定したせん断応力から、粘度、位相、せん断弾性率などを計算しグラフ化します。

 

樹脂のゲルタイム(硬化時間)測定を自動化するメリット

ゲルタイム測定の多くは人の手による測定ですが、手動ではなくゲルタイム測定装置を使用し自動化することで以下のようなメリットがあります。

・測定精度の向上

手動でゲルタイムを測定する場合、人間の判断に頼るため、測定精度にばらつきが生じる可能性があります。自動化することで測定を機械に任せることができるため、測定精度が向上します。

・熟練技術が不要

人の手で測定を行う場合、人的コストがかかる、測定の均一化が難しい、測定技術を習得するまでに膨大な時間が必要などの課題がありました。

新型ゲルタイム測定装置「しずか」は、判定基準をパラメーターで設定し自動測定を行うため、測定者が代わっても同じ結果が得られます。熟練技術がなくても再現性の良い結果を得ることができるため、測定者の手間を省くことができ、人手不足の解消にもつながります。

 

■ゲルタイム測定装置に新型が登場!ガラス繊維プリプレグ、炭素繊維プリプレグなどシートのままでゲルタイム測定が可能です

新型ゲルタイム測定装置

 

■樹脂の硬化時間(ゲルタイム)を自動で測定 ゲルタイム測定装置まどか

 

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