INNOVATION

2025.04.16
CASESTUDY

研究拠点STICが牽引する、樹脂開発イノベーションの創出|大日精化工業株式会社様(浮間合成株式会社様)

シェアする

大日精化工業株式会社様は、独自の技術力で顔料、着色剤、インキ・コーティング剤など幅広く展開する化学メーカーです。
同社のファインポリマー事業部が販売する製品を開発、生産している子会社である、千葉県佐倉市の浮間合成株式会社 佐倉製造事業所内に、2021年12月、オープン・イノベーション型の研究拠点としてSakura Technology Innovation Center (略称 STIC)を設立しました。この最先端の研究拠点には、松尾産業が取り扱うラボ/パイロットコーターVCMLが導入されています。

本記事では大日精化工業株式会社の子会社 浮間合成株式会社の深井様に、ラボ/パイロットコーターVCML導入前の課題、導入後の変化、今後の展望について伺いました。

お客様の多様なニーズに応えるウレタン樹脂系接着剤を開発

-貴社ではどのような製品を開発、販売されていらっしゃいますか?

大日精化工業株式会社では、顔料、着色剤、インキ・コーティング剤などを開発、販売しておりますが、ファインポリマー事業では、樹脂合成部門として、ウレタン樹脂を中心に、イミド系樹脂、アクリル樹脂などを、樹脂設計や樹脂合成技術から 一貫して研究開発し、各種の合成皮革材料やコーティング剤、成形用ウレタンペレット等の他、最近では CO ₂を原材料に用いたヒドロキシポリウレタン樹脂なども製造販売しております。

 

-浮間合成株式会社 深井様のお仕事内容、ミッションについて教えてください。

ウレタン樹脂系接着剤の研究開発を担当しています。

合成皮革やレザー用、化粧シート用、フレキシブルパッケージ用、その他諸々の用途がありますが、各業界で様々な性能を求めておられるユーザー様に対して、他にはない特異な接着剤をお届けすることが、ミッションと考えております。

ファインポリマー事業部 ウレタン樹脂系製品(接着剤、人工皮革 等)を使用した製品、自動車ダッシュボード、靴、ランドセル

最先端設備が集結。協創とイノベーションを加速する研究拠点STIC

-2021年12月に開設された、浮間合成株式会社の研究拠点Sakura Technology Innovation Center (STIC)のテーマについてお聞かせください。

STICは、多くの方々が集い、共に何かを生み出せる、そんな場所にしたいという想いから設立されました。人と人とが協力することで新しいアイデアが生まれ、豊かな未来を創造することを目的に『協創』を掲げています。

今は世界的に変化の大きな時代であり、グローバル化、顧客要求の高度化が進む中でイノベーションの創出が必要とされています。STICは、社内外から多様な人材と技術が集まることで、イノベーションが自然と生まれるような文化や風土を育んでいきたいと考えています。

 

-STICでは、どのような設備が備わっており、それらを活用することでどのようなことが実現可能でしょうか?

研究拠点STICでは、樹脂合成から物性・化学分析、耐久性評価まで、一貫した研究開発が可能です。

フラスコなどの実験器具はもちろん、各種ミキサーや塗工試験機、ガスクロマトグラフ、NMR、 FTIR等のといった分析装置、さらには物性測定装置や耐久性試験装置など、多岐にわたる設備を備えております。これらの設備を活用し、樹脂の合成、塗工・成形加工、そして物理的な性質の評価・化学的な性質の分析、樹脂の改良にフィードバックする一連の作業を迅速に行うことができます。

例えば、ラボ/パイロットコーターVCMLで塗工サンプルを作製し、それをガスクロマトグラフ分析装置で分析すると塗工後の微細な残留物質を正確に特定ができます。また電子顕微鏡やデジタルマイクロスコープで塗工面のムラや微細な欠陥まで可視化して生産現場と相関性のあるデータが取れます。

Sakura Technology Innovation Center (STIC)のラボ/パイロットコーターVCML

多様な研究テーマに迅速に対応するため、塗工方式を自在に選択できるVCMLを導入

-貴社が抱えていた課題についてお聞かせいただけますでしょうか?

以前は、どうしても少量でのハンドテスト評価が中心でした。そのため、実際のユーザー様の加工装置での評価結果とズレが生じることも少なくなかったです。また、ある程度まとまった量の試験片が必要となる評価では、手作業での試料作成によるバラツキが大きく、データの信頼性に限界を感じていました。

さらに、ハンドテストによる評価では再現が難しい場合、お客様に製品をお渡しして評価していただき、結果をいただくという工程を繰り返しておりました。そのため、評価期間が半年以上に及ぶこともありました。

 

-そのような中、パイロットコーター導入を検討された背景について教えてください。

お客様により信頼性の高いデータを提供するために、以前より連続式の塗工設備を導入したいという強い思いがありました。また、技術部門からも、自社内でのテストを通じて開発を加速させたいという要望が寄せられておりました。以前の拠点ではスペースの問題で実現が難しかったのですが、STICへの移転を機に設備導入が可能になったため、様々な選択肢を検討しました。

 

-数ある選択肢の中で、VCML導入の決め手となった点は何だったのでしょうか?

最終的にVCMLを選んだ決め手は、塗工ヘッドの種類が非常に多いことでした。STIC移転前は実機を用いてテストを行ったこともありましたが、一つの研究テーマが終了すると使用する塗工方式が変わるため、新たなテーマでのテストに迅速に対応できないという課題がありました。VCMLは塗工ヘッドを交換することで様々な塗工方式を選択できるため、薄膜塗工から厚膜塗工、ラミネートなど幅広い研究テーマに即対応できることが魅力でした。

さらに、塗工ヘッドの交換が容易でユーザー自身で可能であること、一人でも操作できること、実験室に設置しやすい手ごろなサイズであることなども ポイントが高いです。技術者が直接扱えることはそれだけ見て触って感じる事も多くなるので、経験に基づく知見が蓄積され、いろいろなヒラメキにつながることと思います。

無溶媒・水性塗工システムの研究開発を加速し、持続可能な未来に貢献

今後、VCMLを活用してどのようなことを実現されたいとお考えでしょうか?

環境対応という観点から、無溶媒や水性での塗工システムが求められていますので、VCMLで様々な塗工方法を試し開発を加速させ、持続可能な未来に貢献したいと考えています。手作業では困難な高精度かつ大量の塗工サンプル作成も可能になったため、お客様にこれまで以上に信頼性の高いデータを提供できると考えています。

また、STICでは、多様な専門性を持つメンバーがそれぞれの研究テーマに情熱を注いでおり、VCMLに対する期待も多岐にわたるため、VCMLの可能性を最大限に引き出すため、塗工ヘッドの追加導入への投資も積極的に進めています。

さらに、VCMLを自在に操るエキスパートを育成することに力を注いでいます。人材こそが最大の資産であると信じ、着実に成果へと繋げていきます。VCMLを活用し、お客様への貢献を追求してまいります。

有り難うございました。最後に、今後の展望を教えてください。

市場の変化に柔軟に対応するだけでなく、一歩先を見据えた ちょっと未来のアイテムをお届けできるように、社内外の方々とも、未来のお話を楽しく語らうことで イノベーションの種が沢山生まれる場になることを期待しています。これまでにない高い付加価値を創造することで、お客様に新たな価値を提供したいと考えています。

導入製品紹介

ラボ/パイロットコーターVCML
ラボ/パイロットコーター VCML
印刷/塗工/ラミネートがヘッドの交換で可能なロールtoロールテストコーター。コンパクトで多様性があり、数百ccの材料で手軽にロールto ロールの印刷、塗工を実現します。
https://www.matsuo-sangyo.co.jp/products/vcml/

お客様プロフィール
会社名:大日精化工業株式会社(浮間合成株式会社)
創業 :1931年10月16日
従業員:単体1,437名 連結3,634名(2024年3月31日現在)
URL :https://www.daicolor.co.jp/index.html