INNOVATION

2025.02.20
CASESTUDY
~コンバーターとしての更なる強み、技術力の強化~

受託加工、受託開発、さらには自社ブランド製品の開発スピードアップを目指す | 株式会社セロレーベル様

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今回は2019年に当社ラボパイロットコーターVCMLを導入いただいた、コンバーティング業界のリーディングカンパニーである株式会社セロレーベル様を訪問し、開発部 田中部長、古橋様、生産技術部 北村様に、パイロットコーターを導入された背景や活用状況、得られた効果、今後の展望などをお聞かせ頂きました。

機能性フィルムで社会を支える コンバーティング業界のリーディングカンパニー

-貴社の事業内容や企業理念についてご紹介いただけますか?

北村様 

当社の『セロレーベル(cellolabel )』という社名はセロハン(cellophane)のラベル(label)に由来しています。

創業当時(戦前戦後)、透明フィルムの代表はセロハンであり、紙より薄いセロハンにオフセット印刷は不可能でした。ところが創業者はその方法を編み出し、当社にしかできない透明フィルム印刷ラベルを世に送り出しました。

「他社ではできないからこそ、当社の誇り」をモットーに、無理と思われるようなことにも取り組み、革新的な開発を行ってきた結果、当社は、食品、光学・エレクトロニクス製品、建材、文具、OA製品と様々な分野で使用されるフィルム製品を生み出しています。

-2022年に社名を変更されたとのことですが、それまでは「東京セロレーベル」という社名で長く親しまれていましたね。

京都を拠点とされていたにも関わらず、なぜ「東京」という名前だったのでしょうか?

北村様 

そうですよね。創業者が1937年(昭和12年)に東京日本橋で創業したのですが、戦災で焼かれて、戦後に創業者の出身地近くの京都で再建し1948年(昭和23年)に合資会社東京セロレーベルとして設立しました。一旦は京都で工場を立ち上げ、その後に再び東京に戻ろうという創業者の想いが込められて社名を東京セロレーベルとしたそうです。その後に東京に営業所、京都に3工場を増設。1969年現在の本社である場所に旧3工場を統合移転し、1993年に福井工場(現:鯖江工場)、2020年に越前工場を竣工し、業務を拡大しています。今後はより広く大きな世界に向かって羽ばたくことを目指すという想いから、2022年に「東京セロレーベル」という社名より「東京」を外し、「セロレーベル」へ社名を改めました。

クラス100のクリーンルームを完備。多様なニーズに応える技術力

-コンバーターと言われますが、一般の方には少し聞き慣れない言葉ですよね。

田中部長

はい、一般的にコンバーターとはフィルム、紙、金属箔などの薄物材料に塗工、印刷、貼り合わせ、スリット、製袋などの加工を手掛ける企業のことを指します。当社はその中でも、塗工の「塗る」、貼り合わせの「貼る」、切断や型抜きの「切る」という3つの技術に注力し、様々な製品を世の中に送り出してきました。

例えば、フィルム包装用開封テープ「テアロープン®」は、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどで販売されているおにぎりなどの包装フィルムの開封を補助するテープです。この製品は、消費者の利便性を向上させる「易開封性」という機能を提供するために不可欠なものです。当社が誇る、最小1.0mm幅に切断する「マイクロスリット」技術を駆使し、コーティングからスリッティングまでの一貫生産体制を確立していることが、当社の強みのひとつとなっています。

 

<自社ブランド製品>

-食品パッケージ以外にも、幅広い分野で製品を展開されているとのことですが、注力されているマーケットなどはありますか?

田中部長

光学・エレクトロニクス製品、建材など、多岐にわたる分野で製品の開発・製造を行っております。特定の分野に依存せず、幅広い分野に向けて、コンバーターの強みを活かした製品開発、受託開発、受託加工を展開することで、業界ごとの景気変動リスクにも対応してきました。

従来の市場開拓に加え、近年では、当社の保有するEB(電子線)、UV(紫外線)照射が可能なハイクリーンコーターの特長を活かし、成長市場に向けての開発にも注力しています。

 

-鯖江工場と越前工場にクリーン度クラス100の設備環境があると伺いました。非常に高いレベルですね。

北村様

はい、特にエレクトロニクスや半導体分野のお客様は微細なゴミ一つでも製品に影響が出るため、非常に高いクリーン度を求められます。そのようなお客様のニーズに応えるべく、クラス100の環境を実現しました。コンバーターでここまでの環境を整えているところは少ないかと思います。

 

-今、貴社および開発部で注力されている開発品はどのようなものがありますか?

古橋様

私が担当している製品に、「クッション性離型フィルム」があります。クッション性離型フィルムには「REKushion™」と「PEEKushion™」の2種類があります。半導体や基板関連のお客様から、モールド成形における金型の汚染や洗浄の煩わしさ、高温プレス処理の際に求められる柔軟性や耐熱性、そして脱フッ素といった多様な要望を受けて開発しました。 

PFAS規制にも対応し、シロキサンフリーで優れた離型性能を発揮する画期的なフィルムです。特にPEEKushion™は基板材料で使用されるLCPのような成形温度が高い材料への使用を想定し、離型層にスーパーエンジニアリングプラスチックであるPEEKを採用しました。フレキシブルプリント基板(FPC)製造にご活用いただけます。

手塗りによる大量サンプル作製の苦労から、ラボ/パイロットコーターの導入検討へ

-受託加工・受託開発や自社ブランド製品の開発において力をいれていること、特に苦労された点についてお聞かせいただけますでしょうか?

古橋様

開発品のサンプル作製では苦労しました。まずバーコーターを用いて、様々な条件で手塗りを行うことが多く、作製したサンプルをお客様に提供し、フィードバックをいただきながら評価を繰り返し、製品化に向けた開発を進めていきました。時には2日間で100枚ものサンプルを作製し、UV硬化処理を行うなど、非常にハードな作業が続くこともありました。もちろん、最初からうまくいったわけではなく、お客様からもすぐに良い評価を得られるとは限りませんでした。

 

-2日で100枚を手塗りですか!大変な作業ですね。サンプルの再現性は問題無かったですか?古橋様の匠の技で何とかなりましたか?

古橋様

正直なところ100枚すべてが完全に同一だったとは言い難かったですね。生産機でサンプルを作製することも考えましたが、そのためには生産機のスケジュール調整や大量の原料準備など、様々な課題がありました。コストや納期の面からも、容易に実行できることではなかったので、人海戦術で対応せざるを得ませんでした(笑)。

 

田中部長

そういった開発部の背景もあって、以前からロールtoロールでのパイロットコーターを導入し、お客様のご要望に早期に対応できるよう、少量の原料で柔軟な試作ができる体制を構築したいと考えるようになりました。

 

-そのような経緯でVCMLにご興味をお持ちいただいたのですね。

北村様

はい、そこで2016年頃から社内より導入要請をうけ、国内有名コーターメーカーにも数社見学に行きました。しかしながらどうしても装置が大きくなり、設置場所の問題もあったため難航していました。

そのような中、展示会でVCMLのパネル展示を拝見しました。まだ当時は現在のように国内にデモ機がなかったので、松尾産業様とイギリスRK社へ訪問し実際に私たちの手でテストを行ったところ、想像していたより簡単に操作でき、きれいな塗工ができました。また、VCMLは構造がシンプルなため、若い技術者がロールtoロールコーターの原理や構造を学ぶためにも適していると考えて導入を決定しました。

生産機と比べ20分の1の原料で、均一なサンプルを短納期で作製可能に

-実際にVCMLを導入してどのような効果がありましたか?

古橋様

VCML導入後は、当初の目的であった「一度に大量の均一なサンプル作製」を達成しました。以前はA4サイズで20枚×3水準のサンプルが必要な時など、一枚一枚バーコーターで手塗りしていましたが、VCMLでサンプルを作製し、A4サイズにカットすることができるため、サンプル作製時間を大幅に短縮することができました。初めは塗工条件や張力設定に試行錯誤する場面もありましたが、実機と遜色のないサンプルを安定的に得られるようになり、特に大量のサンプルが必要となる案件において、その効果を実感しています。

 

田中部長

サンプル作製に必要な材料も、生産機での試作と比較して約20分の1で済むようになったため、開発予算が限られている当社や、お客様にも提案しやすくなり、営業部もサンプルを必要とする案件を積極的に獲得できるようになりました。お客様からも、少量の費用で実機に近いサンプルを短納期で確認できると好評です。

 

-VCMLが活躍していて嬉しいです!現在VCMLを活用して取り組まれていることはありますか?

古橋様

200℃まで昇温できるドライヤーを活かし、塗工量と残溶剤分の関係性を検証すること、さらにはパイロットコーターから生産機への塗工条件、乾燥条件、ラインスピードをスムーズに繋げるための検証を行っています。また、環境に配慮したサスティナブル製品の開発にも力を入れていくために、付帯設備のUV照射機を用いた紫外線硬化コーティングのサンプル作製、開発にも力を入れております。さらにはVCML導入後に追加したコロナ処理装置を使用し、インラインコロナを駆使したコート層の密着向上実験にも活用しております。

これはVCMLとは別にはなりますが、EB照射機を付帯しているハイクリーンコーターを活かした受託加工、受託開発、新規自社ブランド製品の開発を進めていきたいと考えています。

環境負荷低減に貢献した自社ブランド製品の拡充

-有り難うございます。最後に、今後の貴社の展望を教えてください。

田中部長

受託加工・受託開発事業のさらなる強化と、自社ブランド製品の拡充を目指し、社員一同、目標達成に向けて日々奮闘しております。市場やお客様のご要望やお困りごとに対して、コンバーターとしての技術を最大限に活用しながら、環境負荷低減に貢献する製品開発にも積極的に取り組んでいます。PFASフリーのPEEKushion™やPPモノマテリアル化に対応したテアロープン®ecoMPPをはじめ、新たな高付加価値製品の創出にも注力し、お客様に必要とされる革新的な製品を提供することで、社会に貢献してまいります。

導入製品紹介

ラボ/パイロットコーターVCML
ラボ/パイロットコーター VCML
印刷/塗工/ラミネートがヘッドの交換で可能なロールtoロールテストコーター。コンパクトで多様性があり、数百ccの材料で手軽にロールto ロールの印刷、塗工を実現します。
https://www.matsuo-sangyo.co.jp/products/vcml/

お客様プロフィール

会社名:株式会社セロレーベル

設立 :昭和23年1月23日

従業員:140名

URL :https://www.cellolabel.co.jp/