【必要性と健康被害】つける・固める場面で汎用されるポリイソシアネートとは、どんな材料ですか?
佐々木:ポリイソシアネートは、2つ以上のイソシアネートモノマーが結合した化合物です。主に、塗料、接着剤、粘着剤のような、「つける」または「固める」ための硬化剤として使います。水との反応性があり、樹脂の表面に活性水素があると、そこにアタックして反応を始めます。現在では、多様な樹脂と混ぜ合わせることで幅広い種類の塗料や接着剤の硬化成分として使われています。
―どんな場面で使われているのでしょうか?
佐々木:ポリイソシアネートで硬化させたものが、いわゆるポリウレタンですね。住宅、高架補修、車輛、航空機、船舶、家電など広い分野でのコーティングに使用されています。古くからあるベニヤ板も、木工のおがくずを固めて圧縮する際に注入する接着剤も、ポリイソシアネートなんですよ。
―とても便利な材料ですね!使うときの注意点はありますか?
佐々木:いろいろな樹脂の中に混ぜ合わせると反応するということは、人体にも反応することになります。よって人体に極力吸入しないようにする必要があります。
―健康被害を防ぐための規制はあるのでしょうか?
佐々木:ポリイソシアネートを生成する際に、どうしても一部に結合しないイソシアネートモノマーが残ってしまいます。日本の場合、20世紀には残留するイソシアネートモノマーの割合が1%未満の自主規制があり、その後0.5%未満に引き下げられました。2007年に発効したEUのREACH規制も同程度の基準でしたが、2023年8月からは、この規制がさらに強化されることになりました。
使用の基準として、イソシアネートモノマーの濃度が単独または組み合わせで0.1%未満であるか、あるいは使用する前に安全な使用に関する訓練を正常に完了していることを保証する必要があります。訓練の保証には大きな手間がかかることから、多くの事業者はイソシアネートモノマー0.1%未満の商品を選択することが予想されます。
―非常に厳しい規制になるのですね。他にも、何か制約はありますか?
佐々木:EUでは規制強化により、ポリイソシアネートを使用した製品のラベルには、肺に疾患が発生する危険性を示すマークや、呼吸困難を起こす可能性などを示す注意喚起の文章を記載しなければいけません。ですが、0.1%未満の商品を使った場合には、これらすべての記載が省けることになっています。