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2023.05.22
GREEN CHEMISTRY

【ジイソシアネート規制強化】健康に働ける環境をつくる超低フリーモノマーポリイソシアネートPOLURGREENシリーズ

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ジイソシアネートのREACH規則が強化されます。ポリイソシアネートPOLURGREENシリーズ(サピッチ社:イタリア)は新規制基準に適応。本記事では品質と健康への重要性についてコーティングマテリアル事業部 佐々木より紹介します。

【必要性と健康被害】つける・固める場面で汎用されるポリイソシアネートとは、どんな材料ですか?

佐々木:ポリイソシアネートは、2つ以上のイソシアネートモノマーが結合した化合物です。主に、塗料、接着剤、粘着剤のような、「つける」または「固める」ための硬化剤として使います。水との反応性があり、樹脂の表面に活性水素があると、そこにアタックして反応を始めます。現在では、多様な樹脂と混ぜ合わせることで幅広い種類の塗料や接着剤の硬化成分として使われています。

 

―どんな場面で使われているのでしょうか?

佐々木:ポリイソシアネートで硬化させたものが、いわゆるポリウレタンですね。住宅、高架補修、車輛、航空機、船舶、家電など広い分野でのコーティングに使用されています。古くからあるベニヤ板も、木工のおがくずを固めて圧縮する際に注入する接着剤も、ポリイソシアネートなんですよ。

―とても便利な材料ですね!使うときの注意点はありますか?

佐々木:いろいろな樹脂の中に混ぜ合わせると反応するということは、人体にも反応することになります。よって人体に極力吸入しないようにする必要があります。

―健康被害を防ぐための規制はあるのでしょうか?

佐々木:ポリイソシアネートを生成する際に、どうしても一部に結合しないイソシアネートモノマーが残ってしまいます。日本の場合、20世紀には残留するイソシアネートモノマーの割合が1%未満の自主規制があり、その後0.5%未満に引き下げられました。2007年に発効したEUのREACH規制も同程度の基準でしたが、2023年8月からは、この規制がさらに強化されることになりました。

 

使用の基準として、イソシアネートモノマーの濃度が単独または組み合わせで0.1%未満であるか、あるいは使用する前に安全な使用に関する訓練を正常に完了していることを保証する必要があります。訓練の保証には大きな手間がかかることから、多くの事業者はイソシアネートモノマー0.1%未満の商品を選択することが予想されます。

―非常に厳しい規制になるのですね。他にも、何か制約はありますか?

佐々木:EUでは規制強化により、ポリイソシアネートを使用した製品のラベルには、肺に疾患が発生する危険性を示すマークや、呼吸困難を起こす可能性などを示す注意喚起の文章を記載しなければいけません。ですが、0.1%未満の商品を使った場合には、これらすべての記載が省けることになっています。

 

【超低フリーモノマー】イソシアネートモノマーの残留濃度規制値0.1%以下 ―松尾産業で取り扱っているポリイソシアネート商品について教えてください。

佐々木:1936年にイタリアで設立された原料メーカーであるサピッチ社の、POLURGREENシリーズのポリイソシアネートを取り扱っています。この商品は、イソシアネートモノマーの残留濃度規制値が、改正後のREACH規制をクリアする0.1%以下であり、EUにおいては既に10年以上の実績がある商品です。超低フリーモノマーを実現させながらも、塗料性能は0.5%の製品とほとんど変わりません。

TDI系、MDI系、HDI系等の超低フリーモノマーポリイソシアネートの豊富なラインナップ。

 

―日本では同等の製品を生産していないのでしょうか?

佐々木:現在、国内製造メーカーとして、東ソー㈱、三井化学㈱、旭化成㈱の3社がポリイソシアネートを生産していますが、生産自体が大きく拡大しない傾向にあります。背景には、ポリイソシアネートの低価格化と設備の老朽化があります。

 

イソシアネートモノマー含有量をより低減した商品を製造するためには、設備を強化するか、作業時間を長くする必要がありますが、低価格を維持しながら老朽化した設備を刷新することは難しいのが現状と思われます。

 

―海外のメーカーで競合となる製品はありますか?

佐々木:ドイツ資本ですがコベストロジャパン株式会社も保有しています。同じEU圏ですが国が違うため、事業継続の観点で調達リスクを分散するためにも、弊社がサピッチ社の製品を取り扱う意義は大きいと思っています。これら輸入商材の活躍によって価格の適正化が進めば、国内メーカーの投資も活発化するかもしれません。

【今後の見通し】作業者の労働環境改善の取り組みをサステナビリティ戦略に ―ポリイソシアネートに関する、今後の見通しを教えてください。

佐々木:海外では、サステナビリティの観点から本革から人工皮革への切り替えが進んでおり、特に自動車メーカーでは高級車においてもインテリアに人工皮革を使用する動きが見られます。人工皮革に使用するウレタンの需要は高まり、ポリイソシアネートの需要増加も予想されます。

日本では、欧州ほど人工皮革への切り替わりが激しくないものの、建材などへの使用は継続しており、需要に大きな変化はないと考えられます。2023年8月からのREACH規則もEU域外では影響力はなく、今のところ日本の規制が追随する動きは見られないため、直ちに既存ビジネスに影響を及ぼすことは少ないでしょう。

しかし、将来的観点から、先んじてイソシアネートモノマー残留濃度0.1%以下の製品に切り替えることは重要であると考えられます。今日、企業活動ではサステナビリティ戦略が重要であり、環境対応という項目には働く人々の環境も当然含まれるべきものです。ポリイソシアネートを扱う作業者が健康的な労働環境を享受できる商品選びは、企業の価値向上につながるのではないでしょうか。

ポリイソシアネートは産業の中で土着的に使用している材料ですが、新たな視点で眺めればまだまだ広がりを感じる材料です。

昨今、化学物質はついつい怪訝されがちな気風がありますが、ポリイソシアネートの長く愛される材料の良さを活かして、且つ、次世代のモノづくり環境に適応させながら、持続可能な豊かさを享受できればと願っています。

ご関心頂けましたらぜひ皆様の開発や研究のお手伝いができればと思いますので、お気軽にお問い合わせください。