世界の都市鉱山が集まる日本の精錬所_求められるトレーサビリティと透明性
しかし、そういった動きが強まっていても、製錬施設を有する国は世界でもまだまだ少なく、数多いサプライヤーに対し出先が限られている状況です。その中で、日本の製錬所は技術や規模において世界でもトップクラスだと言えるでしょう。世界の都市鉱山の4割が日本に集まってきていると言われています。
世界的に出先が少ないということもありますが、少ない中でも海外サプライヤーが日本に卸したい理由が何点かあると考えています。
そもそも、日本は重工業で経済成長を遂げてきた国であり、元々は鉱石産出国でした。金属を精製する業界において長い歴史があり、創業100年を超える鉱山会社が今でも存在します。長い歴史に支えられた製錬技術を活かし、早いタイミングでスクラップからの金属抽出がスタートしたことで、高い技術力を有するようになりました。
さらに、日本には多数の製錬所があるため出先を選べるという点も大きいと感じます。スクラップは種類により価格が大きく変わるため、知識を持って仕分けし、相性のよい製錬施設に出荷できれば、価値が増大することもあります。
そして、日本の国としての信用性の高さです。スクラップは、モノ自体の信用性は正直高くはありません。元の製品は何であったか、実際にどのような比率でどのようなモノが入っているかというのは見た目だけではよく分からないためです。そのため、ほぼ信用取引に近いという側面があります。この「信用」という部分において、日本は海外から非常に評価があると事業を通して感じています。
持続可能な開発や環境保全に向けた取り組みが各国、各企業で進められている中で、リサイクルへの関心はより高まっています。製造業においても高いレベルでの情報開示、バリューチェーン全体での材料の調達から生産、そして消費または廃棄まで追跡可能な状態にする“トレーサビリティ”の確保が求められています。
スクラップ製品も同様です。むしろ、信用取引に近いからこそ高い透明性が求められています。
逆に言うと、トレーサビリティの確保、情報開示をしっかりとできることは、企業としてサプライヤー自体の企業価値を高めることにもつながります。
当社のサプライヤーでも、日本との取引開始により会社自体の信頼が向上し、仕入れ先の幅がひろがったことから取扱量が3倍に増えた実績があるほどです。
高い技術力を有していること、1つの国で出先の選択肢が多いこと、何よりも取引自体が企業価値向上につながること。これらが日本に都市鉱山が集まる理由ではないかと思います。