INNOVATION

2026.06.17
COLUMN / ADVANCED TECHNOLOGY
コートン先生の印刷、コーティング入門 vol.9

膜厚設計の第一歩!Wet膜厚とDry膜厚の関係を理解しよう

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Wet膜厚とDry膜厚はなぜ違うのか?

先生、前回、No.7のバーで塗工したらWet膜厚の理論値は80μmでしたよね?

でもDry膜厚は8.9μmでした。 80μm塗ったのに、どうして9μmくらいまで薄くなっちゃうんですか?

はるきさん

前回の記事 バーコーターの番手でドライ膜厚はどう変わる?塗布重量・比重との関係を解説

コートン先生

疑問に思うところだよね。

まず覚えておいてほしいのは、乾燥後に残るのは「固形分だけ」ということなんだよ。

固形分だけ?

はるきさん

コートン先生

そう。塗料は、固形分(樹脂、顔料、添加剤など)と、溶剤(水や有機溶剤)でできていて、乾燥すると水や溶剤は蒸発して消えてしまうんだ。

なるほど!80μm全部が塗膜として残るわけじゃないんですね。

はるきさん
コートン先生

その通り。さらに、膜厚が減る理由はそれだけじゃないんだ。

それが乾燥収縮だよ。

乾燥収縮?それって何ですか?

はるきさん
コートン先生

乾燥中に溶剤が抜けると、樹脂や顔料の粒子同士が近づいてギュッと詰まるんだ。

その結果、塗膜の体積がさらに小さくなる。 これを乾燥収縮というんだよ。

あっ!だから固形分だけが残るだけじゃなくて、さらに薄くなるんですね!

はるきさん
コートン先生

その通り!さらに、基材によっては塗料が少し吸い込まれたり、濡れ広がったりして膜厚が減ることもあるんだ。

レベリングの影響もあるけれど、膜厚が大きく減る一番の理由は、やはり「溶剤が飛んで固形分だけが残ること」なんだよ。

だから、Wet膜厚とDry膜厚は大きく違う値になるのが普通なんだ。 

Wet膜厚を求めるステップ

なるほど!Dry膜厚が小さくなる理由は分かりました。

でも先生、毎回こんなふうに実際に塗って乾燥させてみないと、最終的なDry膜厚は分からないんですか?

それとも、塗料の固形分や密度が分かっていれば、ある程度計算で予測できるんでしょうか?

はるきさん
コートン先生

実は、固形分率や密度が分かっていれば、Dry膜厚はある程度予測できるんだよ。

おおまかには、こんな関係になるんだ。

 

Wet膜厚からDry膜厚を算出する計算式

 

Wet膜厚 × 固形分率 ×(塗工液密度/乾燥膜密度)≒ Dry膜厚

※実際には、乾燥収縮や基材への吸い込みなどの影響も加わります。

 

ということは「最終的に10μmのDry膜厚が欲しい」と思ったら、

Wet膜厚を何μm塗ればいいかも計算できるんですか?

はるきさん
コートン先生

その通り! Wet膜厚は、乾燥後の塗布重量・固形分・塗工液の密度が分かれば計算で求められるんだ。

今回は、第8回のNo.7のデータを使って、実際にWet膜厚を求めてみよう。

項目

 番手

 No.7

 理論Wet膜厚

 80 μm

 Dry膜厚(実測)

 8.9 μm

 乾燥塗布重量

 18.2 g/m²

 

STEP1 使った塗料の固形分の測定と計算をしてみよう。

 

1.アルミホイルに塗布するサンプル塗料を入れて重さを測る。

塗布重量測定写真

 4.591g (アルミホイルの重量を除いた重量)

 

2.加熱ベッド上で乾燥させる。

 1.145g(アルミホイルの重量を除いた重量)

 

3.固形分の計算

固形分率計算式

 1.145÷4.591≒0.25  固形分率=25%

 

STEP2 固形分からウェット塗布重量を計算してみよう。

 

ウェット重量計算式

 18.2÷0.25=72.8  ウェット重量=72.8 g/m²

 

STEP3 塗工液密度を測定・計算してみよう。

 

1.計量カップを準備して空のカップ重量を測る。

2.塗工液を20ml(=20㎤)いれて再度重量を測る。

3.空容器の重量を引いて塗工液の重量を求める。

 塗工液20㎤の重量: 18.296g 

   密度計算式

 18.296÷20≒0.915  塗工液密度: 0.915 g/cm³

 

STEP4 ウェット膜厚を計算してみよう。

ウェット膜厚計算式

 72.8÷0.915≒79.6  ウェット膜厚=79.6μm≒80µm

 ※今回の計算ではウェット膜厚を求めるため、乾燥膜密度は使用していません。

計算で出したWet膜厚が80μmになりました!

番手からの理論値と一致していますね!

はるきさん

コートン先生

これが塗布重量・固形分・密度を使ったWet膜厚設計の基本的な考え方なんだよ。

まとめ

コートン先生

今回の例では、

• Dry膜厚:8.9μm

• 乾燥塗布重量:18.2g/㎡

• 固形分率:25%

• 塗工液密度:0.915g/cm³

という情報から、Wet膜厚が約80μmになることが確認できたよね。

 

この考え方は実際の開発現場でも役立つよ。

たとえば、目標とするDry膜厚から必要なWet膜厚を逆算したり、塗布重量や番手を決める目安にしたりできるんだ。 また、実測のDry膜厚が想定より薄いときは、固形分率、乾燥収縮、基材への吸い込みなどを確認することで、原因の切り分けにも使えるよ。

 

コートン先生

実は塗工現場では、膜厚よりも塗布重量(g/㎡)で管理していることも少なくないんだ。

だから、「膜厚 ↔ 塗布重量 ↔ 固形分率」の関係を理解できるようになると、塗工条件の見え方が大きく変わってくるんだよ。

なるほど!膜厚だけでなく、塗布重量や固形分率も一緒に考えることが大事なんですね。

はるきさん

おまけ

先生、素朴な疑問なんですけど……

そもそも最初のバーコーターのWet膜厚の理論値ってどうやって計算してるんですか?

はるきさん
コートン先生

いいところに気が付いたね。

実は、バーコーターの番手とWet膜厚の関係にはちゃんとした理論があるんだよ。

今回はそこまで詳しく説明しないけれど、興味があるならRK社のデータシート「メーターバーコーティングの理論」を読んでみるといいよ。

読んでみます!

はるきさん

キャラクター紹介

はるきさん

日々製造現場や研究室を飛び回りながら、「なぜ?」「どうして?」を口にして先生たちに質問をぶつける、好奇心旺盛でちょっとおっちょこちょいな新人研究者。

コートン先生 

長年、コーティングや印刷技術に携わってきたベテラン技術者。
穏やかな語り口と、理論と現場の両面に精通した深い知識で、若手たちの疑問に丁寧に答える頼れる先生。

 

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