INNOVATION

2022.08.24
GREEN CHEMISTRY / SOLUTION
サプライチェーン上で「モノ」だけでなく「データ」を流通させカーボンニュートラルの実現を目指す

製造業のCO2削減 SCOPE3のカーボンフットプリント推進を

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社会課題

2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、政府、自治体、企業が、今まさに真剣に取り組んでいます。脱炭素の取り組みは、日々加速しており、「再生可能エネルギーの活用」、「住宅の省エネルギー化」、「循環資源の活用」が代表的な取り組みとして注目されています。

そういった中、松尾産業(当社)は、産業部門におけるエネルギー使用量の詳細な見える化を実現するべく実証実験を行っています。CO2削減には電力消費量の削減が重要であると当社は捉えています。日本の温室効果ガス排出量は2019年の実績で12億1,300万トンです。その内、エネルギー起源のCO2は84.9%の10億2,900万トンとなっています。更に部門別で見た場合、産業部門で実に38%にあたる3億8,600万トンのCO2を排出しております。

参考:温室効果ガス排出の現状等(経産省) 2022年7月28日 閲覧
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/chikyu_kankyo/ondanka_wg/pdf/003_03_00.pdf」(P.13-14)

日本では「地球温暖化対策の推進に関する法律」(以下、温対法)に基づいて、企業が自発的な温暖化対策を促す仕組みが出来ていますが、他方、国際的なイニチアチブではGHGプロトコルが推奨されています。

GHGプロトコルは「WRI(世界資源研究所)とWBCSD(持続可能な開発の為の世界経済人会議)が共催する団体であり(環境省)」、「各種基準には、海外の政府機関やグローバル企業が参画しており、いずれもデファクトスタンダードとなりつつある。(環境省)」プロトコルです。

GHGプロトコルは温室効果ガスの発生場所をSCOPE1からSCOPE3の3つに分類しています。SCOPE1、及び2は自社の中で把握可能ですが、SCOPE3はサプライチェーン排出量の全体像を把握ができなければなりません。

参考:サプライチェーン排出量の考え方(環境省)  2022年7月28日 閲覧
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/tools/supply_chain_201711_all.pdf

この様に、産業部門における温室効果ガスの削減を実現するには、一社単独では限界がありますが、いずれ、SCOPE3も含めたサプライチェーン全体での電力消費量の削減が求められると見ています。温対法では、外部から調達した熱に対して排出係数を適用して計算する「ロケーション基準法¹」」や、マーケット規準対応の係数を適用して計算する「マーケット規準手法²」」が存在していますが、いずれの方式であっても、実態の測定値との乖離が懸念されております。

当社が出来る事

当社はサプライチェーン全体で電力測定を正しく行う事は意義があると見ています。そこで、当社の関係会社であるDIAM株式会社(以下、DIAM)にて電力測定の実証実験を開始しました。

DIAMでは、取引企業様の要望に沿った形で、合成ダイヤモンドの成膜と製造を行っています。ダイヤモンドの成膜はサイズから厚みまで多様な要望を承り成膜を行っている為、複雑な工程を経て、合成ダイヤモンド成膜処理がなされます。現在、DIAMでは、成膜にかかる総電力量は把握できていますが、当実証実験にて、SCOPE3を見越した電力の自動測定を実施出来ないか検証を開始しました。

実証実験には、株式会社ウフル (以下、ウフル)も協働で実施しています。ウフルは、IoT技術に長けており、センサーで取得した電力消費の波形をAIを活用し、どの装置が稼働しているのかを判定する事が可能か検証といった部分を担って頂いております。

参考:プレスリリース(株式会社ウフル) 2022年7月28日 閲覧
https://uhuru.co.jp/news/press-releases/20211130/

当社が目指す事

当実証実験の結果を踏まえて、当社はより複雑なサプライチェーンを形成する製造業への展開を模索していきます。電力消費量の可視化を実現し、産業部門全体での電力消費量の削減を実施する上で必要となるソリューションの提供を目指していきます。

【注】

¹ロケーション基準法:特定のロケーション(グリッドの範囲や同一の法体系が適用される範囲)に対する平 均的な電力排出係数に基づいて、スコープ2排出量を算定する手法。(環境省)
²マーケット規準手法:企業が購入している電気の契約内容を反映して、スコープ2排出量を算定する手法。(環境省)

【参考】

HP:「温室効果ガス排出の現状など」経産省003_03_00.pdf (meti.go.jp)
20200331019-1.pdf (meti.go.jp)
ref04.pdf (env.go.jp)
supply_chain_201711_all.pdf (env.go.jp)

松尾産業はウフルとの連携により カーボンフットプリント実証実験を開始します | 松尾産業株式会社|グローバルで工業製品を取り扱う商社 (matsuo-sangyo.co.jp)

松尾産業、ウフル、IoTソリューション開発に向けた 協業プロジェクトのCEATEC 2020 ONLINE 出展のお知らせ(2020年10月19日発表)

ウフルと松尾産業、資本業務提携に関するお知らせ(2020年9月7日発表)

*サプライチェーン排出量算定について(参照:環境省サイト

Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2 : 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3 : Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)