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2025.03.28
CASESTUDY

半導体パッケージング工程・多層基板におけるシート材料開発の課題と解決策の提案

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電子機器の内部には、半導体と基板が使用されており、どちらも電子機器の動作に不可欠なものです。電子機器の小型化・薄型化に伴い、半導体や基板もより小さく、より薄くなっていることから、シート材料の需要が拡大しています。本記事では、シート材料の設計・評価に関する課題と、評価装置「Direct Sheet Analyzer しずか」についてご紹介します。

① 電子部品・多層基板材料の小型化・薄型化に伴うシート材料の需要拡大について

近年、スマートフォン、ウェアラブルデバイスをはじめとする電子機器の小型・薄型化が加速しており、それらの内部に使用される電子部品や多層基板の高密度化・軽量化が求められています。それに伴い、シート材料の需要が拡大しています。特に、半導体パッケージング工程や多層基板の製造においては、下記のようなシート材料が重要な役割を果たしています(表1, 図1)。

 

表1: 電子部品・基板に関わるシート材料の例

 

製品名

用途

半導体パッケージング工程

ダイシングテープ

ダイシング中にウエハ裏面に貼り、ウエアの保護・固定する

ダイアタッチフィルム(DAF)

半導体の積層に使用される

ダイボンディングフィルム (DBF)

半導体の積層に使用される

層間絶縁膜

半導体パッケージ基板に使用されるビルドアップ絶縁材料

異方性導電膜(ACF)

特定の方向にのみ電気を通す接着剤

封止シート

熱・湿気・光などの外的要因からICチップを保護する

多層基板(プリント基板)

プリプレグ

多層基板の接着剤と絶縁層の役割を持つ

銅張積層板(CCL)

プリント基板(PCB)の基本材料

ボンディングシート

多層基板やFPC(フレキシブル基板)を接着する

 

パッケージ基板・多層基板に使用されるシート材料

図1: パッケージ基板・多層基板に使用されるシート材料の例

② シート材料開発段階の課題 ~多層基板に使用されるプリプレグの例~

半導体パッケージング工程および多層基板のシート材料設計において、硬化挙動・粘度の制御は不可欠です。これらの特性は、製造プロセスの安定性、最終製品の長期信頼性に影響を及ぼします。そのため、シート材料の開発段階では、温度および時間依存性を考慮した硬化特性、プロセス条件に適した粘度設計の最適化が求められます。以下、それぞれの特性が果たす役割と、その影響について多層基板に使用されるプリプレグを例に出しながら説明します。 

 

硬化挙動(≒ゲルタイム)について

 

硬化挙動(Curing Behavior)とは、樹脂が加熱や化学反応によって、液体または半固体の状態から固体へと変化する過程を指します。その中でも、樹脂がゲル化する時点はゲル化時間(ゲルタイム)と呼ばれます。この硬化プロセスの特性を正しく把握することで、プリプレグの積層時における条件を最適化し、成形の安定性や品質向上につなげることが可能です。

 

ゲルタイムに関わる要因

要因

ゲルタイムへの影響

樹脂の種類と組成

・樹脂の分子構造や官能基の種類(エポキシ、フェノール、ポリイミドなど)によりゲルタイムが変化

・樹脂の架橋密度が高いほどゲルタイムが早くなる傾向がある
 ※樹脂の種類や硬化剤の選択によって変化する場合があり

硬化剤の種類と濃度

・用いる硬化剤(アミン系、酸無水物系、フェノール系など)の種類によって硬化反応の速度が異なる

・硬化剤の量が多いほど反応速度が上がり、ゲルタイムが短くなる傾向

温度

・温度が高いほど、反応が加速し、ゲルタイムが短くなる傾向

・温度が低ければ、硬化反応が遅れ、ゲルタイムが長くなる傾向

硬化促進剤(触媒)

・触媒を添加することで硬化反応が加速し、ゲルタイムの短縮が可能

 

【プリプレグとゲルタイムの関係】

プリプレグのゲルタイムや溶融粘度を計測し、成形時の圧力をかけるタイミングを決める。

◆ゲルタイムを調整することで最適な成形条件が決定!

 

粘度について

 

粘度(Viscosity) は、樹脂の流れやすさを示す指標であり、多層基板の積層プロセスにおける樹脂の流動性や均一な充填に影響します。

 

粘度に関わる要因

要因

粘度への影響

温度

・温度が上昇すると、粘度が低下するため、樹脂が流れやすくなる

樹脂組成(エポキシなど)

・分子構造(鎖長、分岐の有無、官能基の種類、分子量など)による変化

フィラー配合

・フィラー量が増加すると、粘度が増加傾向

硬化剤

・反応速度が異なり、硬化時の粘度変化が変わる

 

【プリプレグと粘度の関係】 

高粘度の場合、積層時に樹脂の流動性が低下し、隙間が埋まらずにボイド(気泡)が発生しやすく、

低粘度の場合、プリプレグ内の樹脂が流れすぎてしまうことがある。

◆適切な粘度制御により、均一な積層接着と信頼性向上が可能!

③「Direct Sheet Analyzerしずか」によるシート材料開発における課題解決

電子部品や多層基板のさらなる小型化・薄膜化が求められる中、従来にないシート材料の開発が進められています。これらの材料の作業性向上や成形条件の最適化を実現するためには、樹脂の硬化挙動(ゲルタイム)・粘度の調整が不可欠です。

これらの特性を測定できるのが、「Direct Sheet Analyzer しずか」です。「しずか」は、ダイボンディングシート、プリプレグ、CCLなど、厚さ数十µmのシート材料をそのまま測定できるため、より実装に近い状態での材料評価を可能にします。

 

シート材料評価における従来の課題

従来、極薄のシート材料を評価する方法は限られており、主に以下のような方法が取られています

・シート材料に使用される樹脂単体で測定

・シート材料を厚さ500µm程度に積層させて測定

しかし、電子材料に使用されるシート材料は、単層(1枚)で使用されており、実際の成形条件に近い状態での測定が求められています。

 

「しずか」のソリューション1:シート材料1枚から測定

 

測定機構の特徴

「しずか」がシートをそのままの状態で測定できる理由は、測定機構にあります。測定時には、上下の熱板(上部:プローブ、下部:熱板)でサンプルを挟み込み、圧力をかけながらプローブが公転運動を行います。この際、プローブの動きによって発生するせん断応力を測定することで、硬化挙動や粘度を算出します(図2)。

熱板断面イメージ図

図2:熱板断面イメージ図

 

また、最大の特徴は、上下の熱板の平行度を高精度に調整している点です。プローブと熱板の平行度が保たれることで、サンプルは均一に挟み込まれ、厚さ10µmなどの超薄型のシートであっても、高い再現性をもって測定することが可能です。

 

「しずか」のソリューション2:ゲルタイム・粘度・粘弾性・位相差などのデータを一括で取得

 

実際の測定画面

粘度測定画面

「しずか」では、ゲルタイム、粘度、粘弾性(貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)、損失正接(tan δ))、位相差などのデータを一度の測定で一括取得し、CSVファイルでダウンロードできます。さらに、温度プロファイルを設定することで、段階的な昇温測定が可能です。そのため、厚さ数10µmのシート材料でも、シートのまま温度変化に伴う粘度変化や最低溶融粘度を高精度に測定できます。

 

(動画)厚さ20µmのプリプレグの測定事例

まとめ

「Direct Sheet Analyzerしずか」は、電子部品・多層基板のシート材料を重ねることなく、シート1枚から、ゲルタイムや粘度の測定が可能です。

今後の電子部品・多層基板のシート材料開発には、より一層の薄型化が必須となり、「樹脂単体での評価」や「複数枚に積層させた状態での測定」ではなく、より実装に近い条件でのサンプル評価が重要です。「Direct Sheet Analyzerしずか」は、今までにない革新的な測定により、次世代の半導体パッケージング工程や多層基板のシート材料開発を最大限に支援・加速させます。

 

Direct Sheet Analyzerしずか

・シートだけでなく液体や粉末のゲルタイムを測定可能

・ゲルタイム・位相差・粘度・粘弾性・溶融粘度など同時に測定

・測定例

 ボンディングシート・層間絶縁膜・GF/CFプリプレグ・CCL・RCC(樹脂付銅箔)など

・十数ミクロン~の極薄シートから厚物まで1枚で測定

・熱板温度設定

 固定温度設定 & 温度プロファイル設定 (常温~240℃)

 

ゲルタイム測定装置 まどか

ゲルタイム測定装置まどか

 

▼製品に関するお問い合わせはこちら

 

 

松尾産業新横浜デモルームでテスト受付中

 

松尾産業デモルームでは、「Direct Sheet Analyzerしずか」のデモが可能です。

オンラインでの面談等も可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

その他、ゲルタイム測定装置まどか、TIMの放熱評価装置(TIMA5)、UV-LED、ラボパイロットコーター(VCML)、卓上印刷試験機、赤外線水分計などの見学・デモが可能です。

 

▼詳しくはこちら

ゲルタイム測定装置しずか

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