花田 純一(Hanada Junichi)
大手専門商社を経て2017年松尾産業に入社。コーティングマテリアル事業部で国内業務を経験後にインドネシアに駐在。現在西日本エリアを担当し塗料メーカーへの営業活動を推進する。
――松尾産業に入社されるまでの経緯を教えてください。
私は当社で2社目になります。新卒では業界大手の専門商社に入社し建材事業の営業を名古屋で1年間経験しました。2年目は風力発電の管理や財務管理を行う部署に配属されました。そこから転職して松尾産業に入社したという経緯です。
――転職を決意された理由は何だったのでしょうか。
新卒での就職活動では“海外で働きたい”という軸で企業を選んでいました。前職も海外に注力していくという話に魅力を感じて入社しましたが、事業の大半が国内中心で、海外駐在の機会はほぼ皆無という状況でした。そのギャップから「第二新卒としてやり直すなら今しかない」と感じて転職を決意しました。
――海外に対する興味の原点はどこにあったのでしょうか。
きっかけは学生時代に見たテレビのドキュメンタリー番組でした。世界を飛び回る商社マンの姿に憧れ、「自分もいつかこうなりたい」と思ったのです。さらに大学時代の留学経験で英語を使い、海外の人々と直接コミュニケーションが取れたことが大きな自信となり、そこから“海外で働きたい”と強く思うようになりました。
――数ある企業の中で、松尾産業を選んだ決め手は何だったのでしょうか。
転職活動では複数の企業を検討しましたが、最も印象に残ったのが松尾産業でした。面接で出会った社員の方々が飾らず本音で話してくださり、「この人たちと一緒に働きたい」と思えたことが大きな理由です。
また海外に興味があると話したときに、「そういったチャンスはたくさんある」と明確に答えていただけたことも大きなポイントでした。実際に入社後も、「やりたい」と声を上げれば任せてもらえる風土があり、これが後の海外駐在につながったと感じています。
――入社前に抱いた印象と入社後に違いはありましたか?
入社前は「歴史はあるけどベンチャー気質なのかな」「商社らしく海外が中心か」と思っていました。
実際に入社すると、国内との取引が多く事業は細分化され、人によって海外担当・国内担当が分かれていました。ただ上層部との距離は近く、社長とも話す機会が多くは良い意味でのギャップでした。
またキャリアのスタートとしてまずは国内業務から経験し、その後に駐在の機会を掴む流れは想定通りでした。その上で、現地では一人で大きな裁量を任される環境があり、年齢に関係なくチャレンジできる文化は入社後に強く実感しました。もちろん責任感の重さというプレッシャーもありましたが、それも成長につながる経験でした。
――入社から8年が経ちますが、当初の希望は叶えられましたか。
かなり叶えられていると思います。特にインドネシア駐在の経験は、自分のキャリアの核になっています。当初はマレーシア駐在の予定でしたが、コロナ禍でインドネシアに変更になりました。当初は『マレーシアの方が英語環境で適しているのでは』と思ったものの、結果的にはインドネシアでよかったと思っています。紆余曲折はありましたが、その中で自分にとって成長につながる経験を積むことができました。
――駐在が実現するまでの経緯を教えてください。
入社4年目のときにインドネシアへの赴任の話が舞い込んできました。海外駐在を希望していることは面接の段階からアピールしており、上司もそれを覚えていてくれたため、声が届きやすい環境があったと思います。
いつ声がかかっても即戦力として動けるよう、日頃から準備を重ねていました。任されている国内業務はしっかりやることはもちろん、仕事後に英語教室に通うなど、語学力を落とさないよう努力していました。さらに日常業務の中で『一人で判断して動く力』を意識して鍛えており、後の駐在にも直結しました。
元々留学経験があったので、現地に行っても語学レベルは問題ないということを、上司や同僚に理解してもらえるように準備していたことがチャンスにつながったのだと思います。
――インドネシアではどのような業務を担当されていたのでしょうか。
インドネシアでは15名のチームを統括し、化成品からビルディングマテリアルまで幅広い商材を扱っていました。中心となる業務は営業でしたが、現地に日本人が私一人だけということもあり、マネジメント、日系メーカーのお客様対応、サプライヤー企業のアテンド、さらには月次での本社レポートまで、営業以外の役割も多岐にわたって担いました。営業に加え、“チームリーダー”と“本社との橋渡し” を兼ねる立場を担ったことは、大きな挑戦であり成長につながる経験でした。
――駐在中に困難な経験もあったと思いますが、どのように乗り越えられましたか。
一番印象に残っているのは、赴任直後に現地メンバーと仕事の進め方について衝突したことです。1〜2時間に及ぶ英語で口論になるほどでした。
文化や仕事の進め方の違いから衝突したこともありました。例えば現地は「とにかく早く進める」スタイルでしたが、私は日本式の承認プロセスに慣れており、その違いで激しくぶつかったこともあります。上司からの助言もあり、最終的には「現地のやり方を尊重しつつ、最低限のプロセスは踏む」という折衷案にたどり着きました。
また、海外ビジネスは泥臭い交渉や信頼関係づくりが不可欠です。お土産を持参して1年以上通い続け、ようやく心を開いてもらえることもありました。
――駐在経験を通じて、自身ではどのような成長を実感されましたか。
駐在前はこういうやり方でないといけないという固定観念があったのですが、現地で「海外だとこういうやり方もある」といったような、思考の柔軟性が身についたと思います。
例えば現地メンバーはスピードを重視し、お客様は価格を最優先する傾向がありました。以前の自分なら承認手続きに時間をかけたり、価格提示で終わらせていたりしたかもしれませんが、駐在経験を積む中で「現地のやり方を尊重しながら最低限のプロセスを残す」「価格メリットを提示する以外に品質保証や現地調達の仕組みを提案し付加価値を付ける」といった工夫が自然とできるようになりました。
帰国後も「お客様からはこう言われているけれど、別の提案をしたほうが真の価値提供につながるのでは」といった発想が自然とできるようになり、固定観念にとらわれず仕事に取り組めるようになったと思います。
受け身ではなく、どうしたらお客様にとってプラスになるかを考える姿勢が根づき、帰任後の仕事でも活かしています。
――現在はどのような業務を担当されていますか。
コーティングマテリアル事業部・大阪本社で西日本エリアを担当し、主に塗料メーカー様への営業活動を行っています。またインドネシア駐在の経験を活かし、後任で現地に駐在する日本人社員サポートや、現地活動内容の国内メンバーへの共有も担当しています。
――駐在経験は現在の業務にどのように活かされていますか。
市場ニーズは年々多様化し、車両向け塗装でも色・質感の選択肢が広がっています。アルミニウムペーストなど主要商材の提案力向上を図りつつ、顧客の新たなニーズにも対応すべくポートフォリオの幅を適切に広げています。こうした環境での海外展開では、駐在経験を活かして現地の仕様・法規・価格動向を機動的に把握し、既存パートナーとの連携強化と補完領域の探索を両輪で進めています。社内では貿易部門と日次で連携し、最新情報を迅速に共有できる体制を取っています。
――松尾産業のバリューの中で、特に意識しているものはありますか。
『違いを受け入れる勇気を持とう』と『半径5メートルのおせっかい』です。
『違いを受け入れる勇気』は海外駐在そのものに直結していました。現地のやり方や習慣を理解しようと努めたからこそ、メンバーとの信頼関係が深まり、4年間をやり遂げられたと思います。
『半径5メートルのおせっかい』は、自分の担当領域以外にも一歩踏み出す姿勢です。駐在時に自分も周囲に助けてもらった経験があるので、今は現地駐在員に対して「困ったことがあればすぐ言ってほしい」「代わりにできることは引き受ける」というスタンスを心がけています。
――今後のキャリアについてはどのようにお考えですか。
今後も海外とは生涯関わっていたいと思っています。海外ビジネスの新しいチャンスがあれば、すぐに飛び込めるような人材でありたいです。
現在は西日本エリアの塗料メーカーを中心に担当し、価格交渉を含め結果に直結する業務を任されています。まずは担当領域で確実に成果を出し、事業部全体に還元できる力を磨くことが当面の目標です。その先はプレイヤーとしてだけでなく、マネジメントにも挑戦し、会社全体を見渡して動ける人材になりたいと考えています。
――松尾産業で活躍できるのは、どのような方だと思いますか。
一番大切なのは、多様性を受け入れられる姿勢だと思います。私自身も駐在時に、現地のスタイルを意識的に受け入れることで仕事の進め方やマインドが大きく変わり、視野も広がりました。
同じように、異なる価値観や考え方をリスペクトし、柔軟に取り入れられる方であれば、きっとここで活躍できると思います。周囲と刺激を与え合いながら成長していける、そんな方に向いている環境です。
――最後に松尾産業で海外駐在を目指す上で、スキルや経験など大切な要素があれば教えてください。
スキルや経験、語学力はあるに越したことはありませんが、それ以上に大切なのはいい意味で「楽天的でいられること」だと思います。
海外赴任前は自分にはなかったマインドですが、異国の地では『1人でできることが増えた』『昨日より一歩進めた』といった小さな成長を前向きに捉えることを大事にしてきました。うまくいかない時でも『なんとかなるだろう』とポジティブに切り替えることで、困難を突破できた経験が何度もあります。
長い駐在生活では、自分の気持ちをどう整えるかが鍵になります。そのためにも固定概念にとらわれず、多様な価値観を持った周囲と協力できる関係性を日頃から築くことが大切です。そうした姿勢を持てる人こそ、海外でも力を発揮して活躍できるのだと思います。