【耐熱性200℃】安定性・透明が優れた導電性ポリマー「PEDOT/PSS」
―松尾産業で取り扱っている導電性ポリマーについて教えてください。
佐々木:このような可能性をもつ導電性ポリマーは、近年次々と開発が進んでいます。
当社でも導電性ポリマーに注目し、以前より導電性ポリマー「 PEDOT/PSS 」を取り扱ってきました。そして、2022年4月の業務資本提携を皮切りに事業化へ向けての取り組みを加速させております。
多くある導電性高分子から、PEDOT/PSS(Poly3,4-EthyleneDiOxyThiophene/Poly4-StyreneSulfonate)が選ばれる理由としては耐熱性が200℃と非常に高く安定性がすぐれていることがあります。
導電性ポリマーは基本的に塗工することで機能を付与していますが、PEDOT/PSSは200℃でも化学組成が壊れることがなく、製造プロセスにおける上流の加工から使用することが可能です。つまり、これまでの利用用途からさらに幅を広げて応用いただくことができるのではないかと考えています。
※ある一定の条件下でのイメージ図です。
また、透明性なども優れており、帯電防止材をメインとし透明電極まで幅広い用途で導電性を再現できることも大きな魅力です。透明度が高いことにより、従来の製造プロセス(ITOスパッタリング工法やメタルメッシュ、無機導電性ナノインクを活用する方式など)に追加で塗布することも可能であり、PEDOT/PSSを塗布することで正孔輸送層を実現することが可能となります。
当社でもまず、導電性ポリマーの特性としてよく知られている正孔輸送層を直近の用途開発として考えています。
―直近の開発用途である「正孔輸送層」とはどのような現象でしょうか?
佐々木:正孔輸送層とは簡単に言うと、電気信号を伝えるエネルギーを多く増やせるドーピング剤のようなものです。
あくまで理論的な話になりますが、スマホのタッチパネルにも上述している導電性ポリマーの仲間「透明導電性フィルム」が使用されています。スマホのように小さなものであれば電子信号が少なくとも、スムーズに信号エネルギーを伝えることができますが、60インチのテレビぐらい大型化するとどうしても反応が鈍くなるなど、操作性が落ちてしまいます。
ここに、PEDOT/PSSを塗布することで電子の量を増やし、従来では難しかった伝達が可能になるということです。つまり、すでにある技術をより強化するお助けアイテムといったところでしょうか。
※イメージ図です。
佐々木: PEDOT/PSSはフィルムコーター機さえあれば簡易に塗工でき、既存設備にて自社独自の透明導電性フィルムを設計することも可能です。上記でお話したように、すでにある技術のアップデートとして。
また、スマホなどで使用されている、透明導電性フィルムの生産技術をもつメーカーは世界でも数社しかないため、どうしてもメーカー製品に頼る必要があり他社との差別化が難しいポイントとなっていました。なので、自社独自の導電性フィルムを制作・使用できることは競合へのアドバンテージにつながるのではないかと感じています。
―製品特徴のほか提供できる価値はどのようなものがありますか?
佐々木:先に紹介したように、導電ポリマーは次世代のモノづくりに貢献する素材です。そのため、まだ研究や開発段階のものが多く、原料素材として提供する導電性ポリマーPEDOT/PSS にも細かなニーズの反映や、用途に合わせた開発が求められています。
PEDOT/PSSを製造するクレバは原液製造とポリマーインク製造の量産体制を持っている数少ない企業であり、一貫生産でコストを抑えた製品の提供、環境や用途に合わせたきめ細やかなユーザーニーズへの対応が強みです。
また、ほとんどの導電ポリマーは、海外で製造されているので交渉が難航したり、小回りが利かないなどの課題があるとお聞きします。商社ならではのマーケットに即した提案、対応力で、研究開発に寄り添った技術だけでないサポートも強みといえるのではないでしょうか。