阿部 岳海(Abe Takemi)
海外営業を経て2018年松尾産業に入社。エネルギーソリューション事業部で太陽電池事業のEU市場開拓に取り組み、現在は系統用蓄電池ビジネスの推進を担う。
――松尾産業に入社されるまでの経緯を教えてください。
私は当社で3社目になります。1社目は業界大手の食品・食料商社で農水産物を扱っていました。2社目はベンチャー系の輸入商社で、ヨーロッパに駐在したり、現地で会社を立ち上げるプロジェクトのマネージャーも経験しました。
3つの商社を経験して感じたのは、それぞれに全く違う特徴があることです。1社目は大手企業で何をするにも多くの承認手続きが必要でしたし、2社目はベンチャー企業でトップダウンが強く社長の判断ひとつで事業の方向性が大きく変わる環境でした。
――転職を決意された理由は何だったのでしょうか。
前職では非常に貴重な経験をさせていただきましたが、結婚を機に働き方や環境を見直したいと考えました。今までの経験を活かしながら、より安定した基盤で新しい挑戦ができる場所を探していました。
――数ある選択肢の中で、松尾産業を選んだ決め手は何だったのでしょうか。
4つの異なる事業部体制による事業継続性の高さ、そして何より、新しい分野でも果敢に挑戦していく姿勢に魅力を感じました。私が求めていた大手の安定性とベンチャーの挑戦性を両立した“いいとこどり”の環境でした。
当時エネルギーソリューション事業部では、事業部長がヨーロッパ市場の販路開拓を掲げていました。面接で印象的だったのは「手探りの段階なので力を貸してほしい」と率直に相談されたことです。経営基盤がしっかりした会社は保守的になりがちですが、松尾産業はそういった企業とは真逆でした。経験豊富な上席の方が当時20代の自分に対して目的達成のために足りない部分について率直に協力を求められる。その誠実さと度量の大きさに強く魅力を感じました。
――入社後の印象はいかがでしたか。
想像以上に決裁のスピードが速かったです。石橋を叩いて渡るというより、リスクを理解しつつ走りながら実践に移す風土が根づいていると感じました。
入社間もない社員でも経営に直接報告する機会があり、現場の声に耳を傾けてくれる文化があります。意見を求められ、提案できる場面が多いのも特徴です。双方がしっかりと理解した上で議論でき、一丸となって事業を軌道に乗せようというポジティブなマインドが強みになっていると思います。
――具体的に、これまでどのような業務に取り組まれてきたのでしょうか。
入社当初の3年間はヨーロッパ市場の開拓に集中していました。文字通りゼロからのスタートで、連絡先すら存在しない状況。前職での経験を活かし、展示会への出展、ネットでのリスト作成からテレアポまで、あらゆる手段で市場開拓を進めました。当時はまだWeb会議が普及していなかったので、現地に足を運ぶことが基本でした。印象的だったのは、入社2週目でトルコ出張が決まったことです。驚きと同時に、この会社のスピード感を肌で感じました。
海外市場開拓で重視していたのは、表面的なメールや電話だけでなく、実際にお会いして相手のニーズやお困り事を直接聞き取ること。価格競争に巻き込まれないよう、相手の課題を深く理解し、長期的にパートナーとして組める関係づくりを意識していました。
――その後、大きな転換期があったとお聞きしています。
2020年のコロナ禍で海外出張が難しくなり、国内市場にシフトしました。そこで着目したのが蓄電池事業です。まずはキャンプブームに合わせて、ポータブル蓄電池のクラウドファンディングを国内で実施しました。BtoBが中心の商社にとってBtoCは未知の領域でしたが、新しい挑戦として取り組みました。このプロジェクトをきっかけに電池のノウハウを蓄積でき、後の大型蓄電池事業へとつながっています。
特に印象深いのは、技術顧問の人脈を通じて大手EVメーカーとの連携が実現したことです。商社を製造しない分、パートナーとの関係構築が何より重要です。私が普段から心がけているのは、ビジネスの有無に関わらずパートナーを作って情報交換をしておくことです。『いつかビジネスできたらいいよね』という長期的な視点での関係構築を大切にしています。
商社だからこそできるトータルソリューションで、これまで関係を深めてきたパートナーたちと一緒に新しいビジネスを作り上げることができました。
――現在担当している国内事業について教えてください。
現在は系統用蓄電池事業の推進を担当しています。中国と韓国をサプライヤーとし、国内市場に展開しています。これまでの海外経験が活きる一方で、日本市場特有の慎重さや細やかさも学んでいます。
再生可能エネルギーの普及に伴い、電力系統の安定化に貢献する系統用蓄電池の重要性は高まっています。商社ならではの幅広い製品ラインナップとネットワークを活かし、お客様のニーズに合わせた最適な設計・開発・システムインテグレーションを担い提案や実装を進めていきます。
――エネルギーソリューション事業部のチームの特徴やスタイルについて教えてください。どのような方が向いていると思われますか。
我々の事業部では、変化の激しい再生可能エネルギー業界に身を置いています。価格変動や国内政策の変更など、外的要因による変化が頻繁に発生します。日々変化があるからこそ、新しいことを前向きに楽しめる人に向いている環境だと思います。
会社から期待されているのは、既存事業の維持だけでなく常に新しい挑戦を続けること。海外の事業モデルを日本市場に転換できるかという視点で、市場にニーズが顕在化する前に将来の芽を仕掛けることができる。これが我々の強みです。
マネジメントスタイルも特徴的です。成果に至るプロセスは基本的に個人に任されています。どう貢献するかを自分で考え、行動できる裁量の大きさがあります。その分、明確なゴールが見えない中でも走り続けられる力が必要。ルールが整った環境で指示通りに動くのを好む方には向かないかもしれません。逆に、自由度の高い環境を楽しみ、自分の工夫で成果を出したい方にはぴったりのチームだと思います。
――松尾産業はどんな会社だと改めて思われますか。
非常にスピード感がある一方で、組織としての一体感があります。問題に直面した際も、「それは現場の責任」と突き放されることはありません。役員も含めて組織全体で課題に向き合い、前向きな解決策を模索する文化があります。これは他社では経験したことのない、松尾産業独自の組織風土だと感じています。
当社バリューのひとつでもある『半径5メートルのおせっかい』は日常的に実感します。契約範囲を超えてでもお客様に満足していただけるまでサポートを続けるのが当たり前になっており、想定以上の対応をすることも少なくありません。だからこそ長期的なお付き合いが多く、現場としても安心して仕事に取り組めます。
また組織規模が適度に保たれているからこそ、一人ひとりに目が行き届きやすいのも特徴です。精神的なケアも含めて、「最近お客様とのやり取りで困ったことはない?」「このメールの件、何か問題があった?」といった声がけが日常的にあります。先輩からのサポートを、今度は後輩に返していく。そんな文化が根付いています。
――松尾産業のバリューの中で、特に共感しているものはありますか。
『仕事は自分でつくろう』『好奇心がなくなったら終わり』『現象よりも仕組みに目を向けよう』の3つです。
ヨーロッパ市場開拓では文字通り『仕事を自分でつくる』ことから始まりました。『好奇心』については、ビジネスの有無に関わらず幅広くパートナー関係を構築し、情報交換を継続する姿勢そのものです。『現象よりも仕組み』は、表面的な価格競争ではなく、相手の課題を深く理解しパートナーシップを組む関係づくりを意識している点と繋がっています。
――最後に、松尾産業に転職を検討されている方にメッセージをお願いします。
創業からの長い歴史があるため、外から見ると「堅い会社」という印象を持たれるかもしれません。ですが、実際には堅固な部分と柔軟な部分が見事に共存しています。
多様な人材、多彩な事業、様々なビジネスモデルが存在する環境です。それらの多様性を楽しめる方に、強くフィットしていただけると考えています。明確な「あるべき姿」が規定されていないからこそ、自分自身でそれを追求し、会社がそれを評価する仕組みがあります。トップダウンではなく、働く社員を中心とした価値観が根強く浸透しているのです。
当社には守りのビジネスと攻めのビジネスが混在しています。私は入社当初から新規事業を任されましたが、通常であればまず既存事業で会社の文化を学び、業界の商習慣を理解してからステップアップするのが一般的だと思います。
しかしここには、新しい分野に対して積極的に若手社員を登用する文化があります。もちろん新規事業ならではのプレッシャーもありますし、他の事業部や他社の試金石になる責任感も大きい。ですがその緊張感が、むしろモチベーションにつながっています。
今後も変化を楽しみながら、新しい挑戦を続けていきたいと思います。