ニーズの最適解を探し続けるー地道な技術検証の積み重ね
-現在取り組まれているUVフレキソインキの開発について、具体的に聞かせていただけますか?
現在はUVフレキソインキを海外向けに設計・開発しています。UVフレキソインキは主にパッケージやラベル用途で使用されており、特に食品関連分野では「環境対応」「低臭性」「安全性」といった項目が非常に重要視されています。
こうした多様なニーズ、機能に応えることに加え、価格競争力のある製品に仕上げるという点も、開発における大きな挑戦です。
単に性能だけを追求するのではなく、各国で異なる法規制への対応や、使用可能な原材料の制限、そして原材料コストといった現実的な制約を踏まえながら、持続可能かつ市場で受け入れられる処方を設計していく必要があります。
-性能だけでなく法規制やコストのバランスまで見なければならないのですね。そうした複雑な要求に対して、どのように開発を進めていくのでしょうか?
開発は、営業部門やお客様から「このような用途で、このような性能が欲しい」といった具体的な課題や要望に応じて進めるケース、また、長期的な視点に基づく大きなテーマの開発があります。
それらの課題、テーマに対して、顔料の種類やその他の原料の組み合わせ、配合量などを細かく変えながら、一つの課題に対してインキサンプルを作成します。
次に、ラボで多数の試作を行い、密着性、光沢、硬化性、耐摩擦性といったさまざまな項目について評価を行います。評価の中で「ここは良いけれど、こちらが足りない」といった部分が見えてくるため、そこからまた処方を微調整し、再度試作、評価を繰り返す──このような試行錯誤の積み重ねによって、最終的にお客様、社会の要求にしっかり応える処方へと近づけていきます。
-非常に丁寧で地道なプロセスですね。そうして開発したインキが実際に世の中で使われるようになるんですね。
はい、そう思うと本当にやりがいがあります。開発に携わったインキが食料品のパッケージやシールラベルとして使用され、製品に情報やイロドリなどの意匠性を与える。そしてそれを手に取った方々の心を豊かにし、感動を届ける──そんなシーンを想像すると、「もっと良いものを届けたい」という気持ちが自然と湧いてきます。
また、海外向け製品を担当していることから、海外のお客様とやり取りする機会も多くあります。文化や価値観の違いに触れながら仕事を進める中で、毎回新たな気づきや学びがあり、そうしたグローバルな業務もこの仕事の魅力のひとつです。
言語や距離といったハードルを越えて、お客様とともに製品をつくり上げていく過程には難しさもありますが、それ以上にやりがいがあり、非常に刺激的で楽しく取り組んでいます。