INNOVATION

2025.07.28
USER VOICE / ADVANCED TECHNOLOGY

「ひとの心をイロドリたい」─色で心を動かすものづくりへの挑戦|東洋インキ株式会社様

シェアする

東洋インキ株式会社様は、artienceグループの中核事業会社として、日本国内はもとよりグローバルに印刷インキをはじめとする製品とサービスを展開されています。長年にわたり弊社が取り扱うフレキシプルーフ100をご愛顧いただいております。
本記事では、東洋インキ株式会社で活躍されている大澤様に、開発という仕事におけるやりがいや、製品開発への想い、そして今後の展望について伺いました。

世界に通じる製品づくりに取り組むUVフレキソインキ開発

 

-現在ご所属の部署と、担当されている研究・開発業務の内容、ミッションについてお聞かせください。

 

東洋インキの技術本部でRC・油性技術部に所属しており、UVフレキソ印刷用インキの開発を担当しています。

開発の現場では、求められる性能水準に達するインキを設計・試作し、それを評価して製品として仕上げていくという業務を行っています。そのうえで、各地域市場での導入・展開まで見据えた開発を行い、最終的には当社の製品シェアをグローバルに拡大していくことが大きなミッションです。

UV硬化型フレキソインキ FLASH DRY® FLシリーズ

 

-まさに“世界に通じる製品づくり”ですね。そもそも大澤様がこの分野、特にインキ開発という領域に携わるようになったきっかけは何だったのでしょうか?

 

開発という仕事の根底にあるのは、やはり「社会に対して価値を提供したい」という想いです。その中でも私は特に「ひとの心をイロドリたい」という気持ちが強くありました。

インキというのは人の五感、特に“視覚”に直接訴えかける力を持っています。自分の開発した製品が、消費者の目に触れ、商品に魅力を与え、生活に彩り(イロドリ)や感動を届ける一部になる─その可能性に惹かれて、artience、東洋インキに入社しました。

ニーズの最適解を探し続けるー地道な技術検証の積み重ね

 

現在取り組まれているUVフレキソインキの開発について、具体的に聞かせていただけますか?

 

現在はUVフレキソインキを海外向けに設計・開発しています。UVフレキソインキは主にパッケージやラベル用途で使用されており、特に食品関連分野では「環境対応」「低臭性」「安全性」といった項目が非常に重要視されています。

こうした多様なニーズ、機能に応えることに加え、価格競争力のある製品に仕上げるという点も、開発における大きな挑戦です。

単に性能だけを追求するのではなく、各国で異なる法規制への対応や、使用可能な原材料の制限、そして原材料コストといった現実的な制約を踏まえながら、持続可能かつ市場で受け入れられる処方を設計していく必要があります。

 

-性能だけでなく法規制やコストのバランスまで見なければならないのですね。そうした複雑な要求に対して、どのように開発を進めていくのでしょうか?

 

開発は、営業部門やお客様から「このような用途で、このような性能が欲しい」といった具体的な課題や要望に応じて進めるケース、また、長期的な視点に基づく大きなテーマの開発があります。

それらの課題、テーマに対して、顔料の種類やその他の原料の組み合わせ、配合量などを細かく変えながら、一つの課題に対してインキサンプルを作成します。

次に、ラボで多数の試作を行い、密着性、光沢、硬化性、耐摩擦性といったさまざまな項目について評価を行います。評価の中で「ここは良いけれど、こちらが足りない」といった部分が見えてくるため、そこからまた処方を微調整し、再度試作、評価を繰り返す──このような試行錯誤の積み重ねによって、最終的にお客様、社会の要求にしっかり応える処方へと近づけていきます。

 

-非常に丁寧で地道なプロセスですね。そうして開発したインキが実際に世の中で使われるようになるんですね。

 

はい、そう思うと本当にやりがいがあります。開発に携わったインキが食料品のパッケージやシールラベルとして使用され、製品に情報やイロドリなどの意匠性を与える。そしてそれを手に取った方々の心を豊かにし、感動を届ける──そんなシーンを想像すると、「もっと良いものを届けたい」という気持ちが自然と湧いてきます。

また、海外向け製品を担当していることから、海外のお客様とやり取りする機会も多くあります。文化や価値観の違いに触れながら仕事を進める中で、毎回新たな気づきや学びがあり、そうしたグローバルな業務もこの仕事の魅力のひとつです。

言語や距離といったハードルを越えて、お客様とともに製品をつくり上げていく過程には難しさもありますが、それ以上にやりがいがあり、非常に刺激的で楽しく取り組んでいます。

UVインキの印刷直後から硬化までの挙動を高精度に再現

研究室のフレキシプルーフ100 UVランプ(左) UV-LED(右)

 

-そういった「感動を届ける」製品づくりに携わるなかで、現場での開発には様々な苦労があるかと思いますが、これまでに特に印象に残っている課題や困難はありますか?

 

特に印象に残っているのは、ラボでの評価と、生産機での印刷結果のギャップです。

UVインキの性能は、印刷後すぐにUVランプやUV-LEDで照射されるかどうかによって大きく変わることがあります。ところが、一般的なラボ用の印刷機では、印刷機とUV硬化装置の距離が離れているため、印刷からUV照射までにどうしても数秒のタイムラグが発生してしまいます。そのわずかな時間差が、硬化性や物性などに予想以上の影響を与えてしまい、現場とラボの評価結果にギャップが生まれていました。

 

-なるほど、たった数秒のズレでも影響が出てしまうんですね。

 

はい、そうした評価のギャップを埋める手段として、「フレキシプルーフ100 UV/UV-LED」を活用しています。試験機本体にUV照射器が搭載されているため、印刷直後にすぐUV照射を行うことが可能となり、これまでラボ評価における課題となっていた照射タイミングの遅れをほぼ解消することができました。

その結果、生産機に限りなく近い条件でインキの挙動を再現できるようになり、評価の信頼性が飛躍的に向上しました。現在では、開発スピードの向上やインキ処方最適化のツールとして活用しており、開発現場では毎日のように使用されるなど、欠かせない存在となっています。

目指すのは“価値ある製品づくり” 現場で鍛えた技術を次のフィールドへ

技術本部 RC・油性技術部の皆様

 

-開発の現場でフレキシプルーフがお役に立てていることを実感できて光栄です。最後に、大澤様の今後の展望についてぜひお聞かせください。

 

まずは、現在進めているUVフレキソインキの市場投入を早期に実現することが直近の目標です。それと同時に、これまで培った知見を応用しながら、UVフレキソに限らずさらに幅広い製品カテゴリーの開発にも挑戦していきたいと考えています。

最終的には、単なるインキの開発ではなく、高い付加価値のある製品を生み出しお客様に届けていけるような、そんな開発をしていきたいです。

お客様プロフィール

会社名:東洋インキ株式会社

創業 :2011年

従業員:730名 ※非正規:パート・派遣・業務委託は除く(2024年12月31日現在)

URL :https://www.artiencegroup.com/ja/group/toyo-ink/

 

東洋インキ株式会社様は、印刷インキ、機能性材料などを手がける、化学技術分野のリーディングカンパニーです。

現在は、持株会社であるartience(読み方:アーティエンス)グループの中核企業のひとつとして、国内外の拠点を通じてグローバルに事業を展開されています。印刷・パッケージ分野に加え、電子・半導体・エネルギーといった先端分野にも対応する機能性材料の研究開発にも注力されています。

さらに、社会課題への対応として、サステナビリティや資源循環にも積極的に取り組んでおり、進化を続けておられます。

導入製品紹介

フレキシプルーフ100/UV、UV-LED

・フレキソインキ(水性、UV)の開発に最適な印刷試験機。

・卓上フレキソ印刷試験の世界標準、ISO2834_2準拠。

・印刷速度は最高99m/min!一瞬で高品質な印刷見本を作製。