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2025.06.30
COLUMN / ADVANCED TECHNOLOGY

TIMの放熱性能を支える「窒化アルミニウムフィラー」

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電子機器の熱対策に欠かせないサーマルインターフェースマテリアル(TIM)は、その放熱性能を支える熱伝導フィラーの選定が重要です。中でも窒化アルミニウム(AlN)フィラーは、高い熱伝導率と電気絶縁性を兼ね備え、TIM用途に最適な素材として注目されています。
本記事では、窒化アルミニウムフィラーの特長や、他の主要なフィラーとの比較したTIM用途における優位性などについて解説します。

電子機器の進化と放熱対策の重要性

スマートフォン、電気自動車(EV)、高性能な産業用機器など、私たちの身の回りの電子機器は年々進化し、高性能化・小型化が加速しています。その結果、機器内部で発生する熱の量も増加し、熱対策の重要性がこれまで以上に高まっています。

熱が適切に放散されないと、内部温度が上昇し、パフォーマンスの低下、誤作動、さらには製品寿命の短縮につながる恐れがあります。こうした課題に対処するために、熱設計や放熱素材の活用が不可欠です。

TIM(サーマルインターフェースマテリアル)の役割と必要性

電子機器の放熱対策には、ヒートシンク、ファン、液冷システムなど様々な方法がありますが、中でもサーマルインターフェースマテリアル(TIM)は、放熱に重要な役割を果たします。

TIMとは、IC(集積回路)やパワーデバイスとヒートスプレッダ、ヒートシンクなどの放熱部品との間に挿入される熱伝導性材料です。発熱源と放熱部品との接触面の凹凸を埋め、すき間をなくすことで、熱を効率よく外部に逃がす経路を構築します。

関連リンク:Thermal Interface Material(サーマルインターフェースマテリアル) | 放熱材料評価方法の課題と解決策

TIMの性能を決める「熱伝導フィラー」

TIMの主成分は通常、シリコーンやエポキシなどのポリマーですが、これらの樹脂自体は熱伝導率が低いため、単体では十分な放熱性能を発揮できません。

そこで、熱伝導フィラーを高濃度で配合することで、TIM全体の熱伝導率を向上させ、効率的に熱を伝達することが可能になります。適切なフィラーの選定や配合設計が、TIMの冷却性能を左右する重要な要素です。

熱伝導フィラーに求められる特性

TIMに含まれるフィラーは、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)、炭化ケイ素(SiC)などがあり、以下の特性が求められます。

 

高い熱伝導性

放熱対策を効果的に行うためには、材料の熱伝導率が高いことが不可欠です。

 

電気絶縁性

電子機器内部では回路が密集しているため、絶縁性の高い材料で短絡や漏電を防ぐことが重要です。

 

適切な密度

TIMの用途に応じた適切な密度を持ち、軽量化と放熱効果のバランスを取ることが重要です。

 

高い充填率の実現

充填率は粒子の形状や粒径分布設計によって左右されます。

 

・粒子の形状(球状粒子と多面体粒子)

球状粒子:隙間なく密に充填しやすいため、TIMや放熱樹脂に混ぜたときに高い充填率を実現します。充填率が高いほど、熱の伝わる経路(ヒートパス)が形成されやすくなり、熱伝導率が向上します。

多面体粒子:粒子の接触面積が大きく、放熱基板などで高性能を発揮します。

 

・粒子径と配合

大粒径と小粒径のフィラーをバランスよく配合することで、高充填率や流動性等を実現し、TIMの総合的な熱伝導性能を向上させることが可能になります。

球状粒子の樹脂充填イメージ

大粒径(約50–80μm):フィラー粒径としては大粒子であり、熱伝導率の向上に寄与します。一方、粒子間の隙間が多く発生します。

小粒径(約1–10μm):フィラー粒径としては一般的で、充填性が良く均一なTIMを形成しやすくなります。フィラー同士の接触点が増すほどに熱の伝達経路(ヒートパス)が形成されやすくなります。

 

表面処理の有無

AlNフィラーは親水性が高いため、疎水性処理(シランカップリングなど)を行うことで、樹脂との相性が向上します。使用するポリマー(エポキシ、シリコーン等)に応じて適切な表面処理を選択することが重要です。

窒化アルミニウム(AlN)フィラーがTIMに最適な理由

TIM(サーマルインターフェースマテリアル)に用いられる熱伝導フィラーにはさまざまな種類がありますが、材料ごとの特性を比較すると、窒化アルミニウム(AlN)は熱伝導率・電気絶縁性・密度のバランスに優れ、放熱材料として非常に適した材料であることがわかります。

 

フィラー比較表(代表材料)

材料 熱伝導率 (W/mK) 絶縁性 密度 (g/cm³) 主な用途
窒化アルミニウム(AlN) 約170–200 あり 約3.3 パワーモジュール基板、TIM
窒化ホウ素(BN) 約30–100 あり 約2.3 放熱シート、TIM
グラファイト 約200–1000 なし 約2.2 放熱シート、ヒートスプレッダ
アルミナ(Al₂O₃) 約20–35 あり 約3.9 絶縁フィラー、セラミック基板、TIM
酸化亜鉛(ZnO) 約20–60 あり 約5.6 EMI対策フィラー、熱硬化型接着剤など

松尾産業が取り扱う窒化アルミニウムフィラー

松尾産業では、TIMなどの放熱樹脂用途に最適な球状窒化アルミニウム(AlN)フィラーを取り扱っています。

以下のような特長を備えており、放熱設計における高性能化に貢献します。

 

特長

 

球状粒子×粒子径MAX80μm

高充填率を実現し、熱伝導パスの形成に優れる構造

高熱伝導率×高絶縁性の両立

TIMに求められる性能を兼ね備え、信頼性を確保

 

熱伝導率 170 W/m・K(RT)(焼結体)

放熱効率を大きく向上させる高性能材料

 

カスタム表面処理対応

シリコーンやエポキシ系など、用途に応じた分散性・密着性を最適化

 

用途

 

・TIM(放熱シート、放熱グリスなど)

・半導体封止用樹脂 等

 

製品仕様の詳細はこちらから

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松尾産業の「熱」ソリューション

松尾産業では、高熱伝導性と電気絶縁性を兼ね備えた窒化アルミニウム(AlN)フィラーを中心に、放熱材料の高性能化をサポートしています。

さらに当社では、材料の提供にとどまらず、TIMの放熱性能を評価する装置Thermal Interface Material Analyzer TIMA 5を活用した試験・分析も可能です。

新横浜駅から徒歩5分の松尾産業デモルームでは、TIMA 5を用いたサンプル持込での評価に対応しており、TIMの性能を実際の条件下でご確認いただけます。

熱に関する課題のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

 

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お問い合わせ先

松尾産業株式会社 アドバンスドテクノ事業部

E-mail: advanced-t@matsuo-sangyo.co.jp
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〒222-0033 横浜市港北区新横浜2-3-8 KDX新横浜ビル1F